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TFGニュース 2023年9月号

中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)
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2023年9月号 No.385
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Ⅰ インボイス制度、直前対策

― インボイスの準備は万端ですか? ―
 
来月、10月から良くも悪くもいよいよインボイス制度がスタートします。制度開始が近づけば近づくほど何か面倒な制度で、気が重くなりますが、仕方ありません。当ニュースでは開始直前のインボイス制度について皆様方に今一度、直前対策として最低限の基本事項を中心におさらいして頂きたく記載したいと存じます。
インボイス制度の目のつけどころですが、これは仕入税額控除についてです。消費税の納税額計算はご存知の通り、売上高等の収益に係る消費税額から経費に係る消費税額を控除する、つまり差し引いた額を計算して行います。この「経費に係る消費税額を控除する」が仕入税額控除になりますが、これをインボイス制度で定められた請求書等(以下、「インボイス」とします。)を保存することで認めることになりました。従って、インボイス制度に定められたインボイスを保存できないと仕入税額控除ができなくなり、消費税の納税額が増えることになるのです。しかも、インボイスを発行するためには税務署に届出を提出して、インボイス発行事業者としての登録を要し、加えてインボイス発行事業者は消費税の課税事業者(納税義務者)になることになりました。
これがインボイス制度の一丁目一番地のお話しです。また、インボイスはこれを売手(発行する)側と買手(受取る)側の二手に別れますが、皆様方はインボイス発行事業者として登録が済まされていることを前提として、買手側の立場で話を進めさせていただきます。

■インボイス制度における「インボイス」と絶対的記載事項

インボイスを上記において「請求書等」と記載しました。「等」ということなので、お分かりでしょうが請求書だけではありません。納品書、領収書、レシート、仕入明細書などもインボイスです。経費を現金支払いした場合は、領収書、若しくはレシートを受領しますがこれもインボイスに当たります。さて、発行されて受取ったインボイスですが、インボイスには制度特有の必ず記載が必要な、絶対的記載事項があります。これは次の3つであります。① 登録番号、② 販売したものなどの税抜価額及び税込価額を消費税率ごとに区分して合計した金額及び適用消費税率、③ 消費税率ごとに区分した消費税額です。インボイスを発行する側も受取る側もこの記載は必ず確認して下さい。なお、①から③は、請求書のみだけで記載がなくても、請求書は②と③、納品書は①と請求書と納品書に関連性が確認できて①から③の記載があれば足りるものとされています。

■ 受領した請求書等がインボイスでなかった場合

受領した請求書等がインボイスでなかった場合ですが、仕入税額控除ができないと慌てないで下さい。インボイス制度ではインボイスの保存ができてなくても仕入税額控除ができる例外事項があります。
先ず、その取引がそもそもインボイスの保存が必要でない取引に該当するかどうか確認して下さい。これは3万円未満の公共交通機関利用によるもの、郵便切手を対価とする郵便サービス、3万円未満の自動販売機による商品の購入等、通常必要な従業員の出張旅費・通勤手当などが該当します。これらに該当すれば仕入税額控除ができます。
上記に該当しない場合には、次に御社(貴方様)の基準期間の課税売上高が1億円以下などに該当し、その取引が税込1万円未満の取引に該当するかどうかを確認して下さい。これに該当すれば仕入税額控除ができます。「基準期間の課税売上高が1億円以下など」に該当するかお分かりでなければ、顧問の会計事務所にお聞き下さい。
上記のどちらにも該当しない場合は、仕入税額控除ができなくなるということですが、令和5年10月1日から令和8年9月30日までは80%の仕入税額控除ができるという経過措置があります。経過措置の最終期限は令和11年9月30日までですが、令和8年10月1日から和11年9月30日までの期間の仕入税額控除は50%です。注意してください。そして、令和11年10月1日から完全に仕入税額控除ができなくなります。

■ 取引先様の登録番号の確認

インボイス制度が開始すれば登録番号はインボイスで確認できますが、事前に確認したい場合は取引先様にお尋ねになれば分かりますが、自分で調べることはできないかという場合、個人事業者様はできないのですが、法人様はできます。法人のインボイス登録番号は、法人番号の先頭に「T」を付けたものです。法人番号は、インターネットで「法人番号検索」で検索すれば「国税庁法人番号公表サイト」がヒットするのでそのサイトに入り、法人名称などを入力すれば法人番号が分かります。次に、「インボイス登録番号検索」で検索すれば「国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト」がヒットするのでそのサイトに入り、調べた法人番号を登録番号に入力すれば、登録番号が分かります。取引先様が本当にインボイス発行事業者であるかどうか確認するには、登録番号さえ分かれば法人様であろうが、個人事業者様であろうが、この「国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト」で確認できるということです。
 
以上、制度開始に当たり、最低限の基本事項をおさらいしましたが、実際に制度が開始すれば、「これはどうする?」、「あれはどうする?」ということは発生すると思います。そのような場合は顧問の会計事務所にお尋ねするなどして、慌てることなく冷静に対処されることを望みます。

Ⅱ 寄付金とその他の経費

― 実務上の留意事項など -
 
法人が寄付を行った場合、寄付金額総額が損金算入できる寄付と損金算入限度額が定められている寄付とがあります。寄付金の損金算入を無制限に認めてしまうと特定の団体や個人に寄付することにより税金を恣意的に減額させることが可能となるためです。
 ここでいう寄付金とは単純に金銭の贈与のみではなく、不動産などの資産の贈与やサービスの無償提供など、つまり経済的利益の無償供与も含まれます。また、通常得るべき金額よりも低い金額での譲渡を行った場合でも、通常得るべき金額との差額が寄付金と認定されるリスクもあることに留意ください。
 なお、勘定科目にとらわれず、実態が寄付金と認定されると、その他の勘定科目(例:雑費、仮払金など)で計上されたものでも実態で判断されることになりますので、実態が寄付金と考えられるものの有無について検討が必要と考えます。
 
以下では寄付金と類似の勘定科目について見ていきたいと考えます。

■寄付金と交際費

1.災害等で被災した取引先に対する寄付について
被災前の取引関係を維持・回復を目的として災害発生後、「相当の期間内」に当該取引先に対して行った支援については、災害見舞金、事業用資産の供与及び役務の提供のために要した費用は寄付金や交際費に該当せず、損金として処理できるものと考えます。
 
2.政治資金パーティーの参加費用
一方、政治家が主催するパーティーなどについては、資金回収のために開催されることも多いと考えられ、実質的に寄付金とみなされます。そのため、支出金額の内、一定の金額は損金不算入となります。

■ 寄付金と広告宣伝費

取引先などに自社名などが記載された陳列棚などを贈与した場合、その贈与のために要した費用は寄付金ではなく、繰延資産計上し償却費として損金算入されることになります、なお、繰延資産が20万円未満の場合には支出時の損金とすることができます。

■ 寄付金と貸倒損失

貸倒損失の計上を行うに当たっては、その損失計上に相当の理由がなく、経済合理性がない場合においては寄付金として認定されることになります。
 
一般的に寄付金と言っているものでも実態がどうかとの判断が必要となります。例えば法人が寄付した支出であっても、法人の役員等が個人として負担すべき性格を持つ支出は、その者の給与として税務上は寄付金から除かれます。つまり給与として損金算入はできますが、源泉所得税がかかります。
 
企業などの法人は、地域社会の一員として見られる場合もあります。実際に自然災害時に復興目的の義援金や地域イベントなどの協賛金を慣習的に支出する企業も多数存在します。企業とは営利目的なので供与や贈与など損金算入すべきではないとの意見もあるでしょうが、法人として存在する以上、寄付をする権利が認められています。例えば、企業が円滑に事業活動を進めるための経費とみることもできます。そのため、損金算入が認められています。ただし冒頭でも申し上げた通り、無制限ではないので注意しましょう。

Ⅲ ダークパターン

― 自社サイト立ち上げでは要注意 -
  1. 最近、「ダークパターンを使ってユーザーをだまし、有料会員へ登録させている」として、米国連邦取引委員会がAmazonを提訴し話題になりました。このニュースを皮切りに、「ダークパターン」への注目が一層高まっています。
ダークパターンとは、「ユーザーが無意識に不利な行動をとるように設計された、「悪意のあるデザイン」を意味し、欺瞞的(ディセプティブ)デザインとも呼ばれています。この言葉は、ユーザーエクスペリエンス(UX)の専門家であるハリー・ブリヌルが2010年に名付けたもので、大きく12の種類に分類することができます。以下ご紹介させていただきます。
 
1. ひっかけ質問
  紛らわしい質問でユーザーを特定の選択に誘導する。
2. こっそりかごに入れる
  顧客の同意なしにユーザーのショッピングカートに商品を追加する。
3. ゴキブリホイホイ
  登録は簡単だが、キャンセルや退会方法が複雑で難しい。
4. プライバシー・ザッカーリング
  ユーザーの予想を超えて多くの個人情報が公開される。
5. 価格比較の阻止
  品価格の比較を意図的に難しくする。
6. 視覚的干渉
  ユーザーが気付かないようにその情報から注意をそらせるように仕向ける。
7. 隠されたコスト
  購入プロセスの最後で配送料やサービス料など予期せぬ金額が発生する。
8. おとり商法
  おとりの情報を利用してユーザーに意図しない行動を促す。
9. コンファームシェイミング(羞恥心の植え付け)
  ユーザーがオファーを断ろうとする際、羞恥心や罪悪感を与えて断りにくくする。
10. 偽装広告
  サイトのコンテンツに偽装してクリックを誘う広告。
11. 強制的な継続性
  サービス無料トライアル終了後、何の告知もなく請求する。
12. 友達スパム
  ユーザーのアドレスやソーシャルメディアから勝手にスパムメールを送信する。
 
Amazonのダークパターンはゴキブリホイホイではないかと米国連邦取引委員会が提訴したものです。全面的に争う姿勢を見せていますが、実際解約するのはわかりにくいものです。6回も画面の更新が必要で、クリックを間違えると更新したようになってしまいます。

■ 調査結果

2022年に行われた東京工業大学の調査によると、国内で提供されているショッピングやSNS、ゲームなどの主要アプリの9割に「ダークパターン」と呼ばれる画面デザインが使用されていることが分かったそうです。同大のチームが人気アプリ計200個を対象にダークパターンの有無や手法を調査したところ、93.5%に使用され、うち63.5%に3種類以上の手法が用いられていたとされています。

■ 規制

1.EU(欧州連合)  
  デジタルサービス法(2022年合意)で消費者を欺くウェブデザインの設計を禁じています。
2.アメリカ  
  州法で一部の州では規制があります。
3.日本  
  2022年6月特定商取引法の改正法の施行。と、一部規制がかかっています。従って、現在において一部は自己防衛するしかないのが現状です。

■ 自社サイト立ち上げでは

確かにダークパターンは、簡単かつ低コストで大きな利益を生み出すことが可能なため、安易に手を出したくなる手法です。しかし短期的な効果の後に待っているのは大きな損失です。

1.日本でもダークパターンに制裁金が科される日は遠くない
  日本でも消費者センターに相談される件数は大幅に増加しており議論が進んでいくことと考えられます。アメリカでは巨額の制裁金が科せられ始めています。
 (1)Vonage(インターネット電話サービスのプロバイダー会社)
  解約の際に早期解約料金を支払う必要があると言われます。場合によってはその料金が数百ドルです。又解約方法が複雑でエージェントに直接連絡しても数か月かかるといった具合でした。これに対して連邦取引委員会の措置により早期解約料金を支払った顧客に対して100億ドルが返還されます。
 (2)エピックゲームズ(ゲームフォーナイト運営会社)
  13歳未満の子供の個人情報を保護者の同意を得ずに収集し、「児童オンラインプライバシー保護法」に違反し、また意図しない課金を促すようなゲームデザインの違法性を指摘し合計5億2000万ドル(約710億円)の制裁金を科しました。
  金額も大きいですが、それだけの問題ではなく信頼の喪失にとどまらず、口コミサイトで酷評されるなど評判にも大きなダメージを追うことになります。
  この流れからも日本でも規制がかかってくることが想像できます。

2.ユーザビリティ
  ではどうすればよいのか、ユーザビリティつまり「思わず人に伝えたくなる」を重視したサイト構築が第一歩です。
 
  行き詰ると他社の優良なサイトを模倣しがちです。それがダークパターンをこれほど日本にはびこらせた原因とも言えます。これからのサイト運営では、常にユーザーからのフィードバックを重視し、クレームなどの負の問い合わせに関して組織内で共有し、問題が発生した場合はサイロを超えたタスクフォースを立ち上げていくことも必要でしょう。
 企業全体でお客様に喜んでもらうための体制づくりの効果は、ダークパターンに対する罰金を回避するだけにとどまらず、長期的に見れば事業の発展に繋がっていくはずです。

経済産業省 情報ミニコーナー

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「挑戦する中小企業応援パッケージ」が金融庁・財務省連名で公表されています。詳しくはこちらまで。      https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230830002/20230830002-1.pdf


今月のブックマーク

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セミナー情報

経理事務の省力化 WEBセミナーのご案内

インボイス制度は10月からスタート。さらに、令和6年1月から電子帳簿保存法も施行となります。請求書・領収書などメールでもらったりしていませんか。今回の証憑保存機能は、電子帳簿保存法にも対応しております。今まで以上に経理事務は厳格化し、煩雑化していきます。経理事務の省力化のシステムは日々進化しておりますが、なかなか今までやってきたことの変化に抵抗のある方が多いのが現状です。1回目にあわせて今回も、別の最新の機能をご紹介させていただきます。経理のDXも視野に入ってくるようなシステムになっております。
 この機会に是非今後の経理事務の厳格化・煩雑化にお役立ていただきたいと思います。

☆ 第2回 証憑保存機能による電子保存義務化への対応

●配信期間
令和5年10月2日(月)8:00~10月20日(金)24:00
●視聴時間
60分
●申込期限
9月15日(金)迄
●費  用
無 料
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