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TFGニュース 2023年7月号

中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)
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2023年7月号 No.383
今月のトピックス

  経理事務の省力化
経営のお役立ち情報

Ⅰ 電子インボイスとは?

― 電子インボイスが経理業務に与える影響 ―
 
ご存知の通り、本年10月よりインボイス制度が開始します。電子インボイスとは、インボイス制度導入後において仕入税額控除を受けるために適格請求書を電子データ化したものをいいます。デジタル庁は営業部門などを後方支援する経理などの部署であるバックオフィス全体の業務の効率化と生産性向上を目的にしています。そのためデジタル庁においては、バックオフィス業務をデジタルで完結させる電子インボイスの標準仕様の策定・普及を官民連携のもとに取り組んでいます。ここで、重要なことは「電子インボイスの標準仕様」化です。そこで、日本国内の事業者が共通して利用できる電子インボイスのシステム構築を目指して「デジタルインボイス推進協議会(EIPA/エイパ)」が設立されました。EIPAはデジタル庁と連携し国内の電子インボイスの運用を統一規格で行うためにPeppol(ペポル)を採用すると発表しました。Peppol(Pan European Public Procurement Online)とは、請求書などの世界標準規格です。ヨーロッパやオーストラリアなどの40か国以上で利用されています。「電子インボイス」の他に「デジタルインボイス」という言葉も存在しますが、電子インボイスはインボイス(適格請求書)を電子化したもので、デジタルインボイスはその電子化したデータを使った請求業務の効率化を可能にするものです。つまり、Peppol(ペポル)をベースとして標準化され構造化された電子インボイスはデジタルインボイスに該当します。以下、Peppol(ペポル)で作成される電子インボイス(デジタルインボイス)を前提にした記載を進めます。

■ 電子インボイス(デジタルインボイス)の導入によるメリット

 
  1.  請求書処理業務の負担軽減
大企業ではEDI(電子データ交換)システムで電子インボイスに対応することが予想されますが、それでは規格が統一されていないことで手入力が必要になります。規格が統一されれば売手と買手の会計システムが異なっていても自動でデータ入力できるようになり、ヒューマンエラーに気を遣う必要もなく、業務負担が軽減されます。
  1. 海外企業との取引の効率化、活発化への期待
ペポルは広く海外で採用されているので海外企業との取引の効率化、活発化につながることが期待されます。
  1. 請求書処理業務のテレワーク・リモートワーク化が可能
働き方改革でテレワーク化が進められています。請求書がすべて電子データ化されることはなくても、かなりの部分で電子データ化によるペーパーレス化が進めば経理担当者は出社しなくても請求書を処理することが可能になるでしょう。
  1. 管理コストのカットや検索性の向上
電子インボイスであれば紙のように保管場所に係るコストはかかりません。つまり、データで送信、管理できるため不要なコストをカットすることができます。クラウドあるいはローカルにデータが保管されるので、ルールを決めて保管しておけば瞬時に目的の請求書を呼び出すことができます。ただし、電子取引に該当するので電子帳簿保存法の要件に沿った保存が必要です。

■ 電子インボイス(デジタルインボイス)の導入によるデメリット

  1. 真正性確保・改ざん防止
真正性確保・改ざん防止は電子化で問題になります。これに対しては、規程の策定やタイムスタンプの付与などの措置が必要です。現在、総務省では「eシール」と呼ばれる適格請求書発行事業者情報を付与した電子署名の制度化を検討しています。これが導入されれば適格請求書発行事業者の電子インボイスの真正性確保、改ざん防止に対する措置のための負担が軽減されます。
  1. 情報漏洩リスク
紙の請求書に情報漏洩のリスクが存在するように、電子インボイスにもそのリスクは存在します。セキュリティ対策は、万全を期す必要があります。
  1. 電子化が困難な取引先の存在
請求書の電子化は取引先の理解を得る必要があります。何らかの理由で紙での請求書を希望する取引先が存在するかもしれません。また、そもそも請求書を電子データで受け取ることができない取引先も存在するかもしれません。このような取引先に対しては紙の請求書を発行するしかありません。
 
令和6(2024)年1月1日以降、請求書・領収書・契約書・見積書などに関する電子データを送付・受領する場合には、保存要件に従った電子データの保存が行えるようになることが必要です。電子インボイスは請求書ですので、これに該当します。従って、考えようによっては電子インボイスに切り替えるには丁度いい時期かもしれません。電子インボイス導入によるメリットの1と3は、経理業務の生産性、効率化に対して与える影響が非常に大きく、これは経理業務の悲願でもあります。
電子インボイスの導入をご検討してみてはいかがでしょうか。

Ⅱ 資本的支出と修繕費の区分

―実務上の留意事項など―
資本的支出と修繕費の区分については、実務上判断が困難な事例も多くあります。税務上、法人税基本通達において両者の区分についての「例示」が行われており、会計処理するにあたって参考にしていく必要があります。その「例示」されている事項を以下で見ていきたいと思います。

■資本的支出及び修繕費について

資本的支出とは、固定資産の修理、改良などのために支出した金額の内、その固定資産の使用可能期間を延長又は価値を増加させる部分をいい、取得価額に含まれることになります。一方、修繕費とは有形固定資産の通常の維持管理又は原状回復のための支出をいい、期間費用とされます。
資本的支出と修繕費の各々のキーワードは「使用可能期間の延長又は価値の増加」及び「維持または原状回復」であると考えます。
会計上、資本的支出と修繕費の区分は明示されておらず、実務上どちらにするかの判断は税務上の取り扱いを検討することが必要になってきます。
 
以下では税務上の取り扱いについて、例示されている事項を紹介したいと考えます。

■税務上の取扱いについて

  1. 上記の内容を受けて、資本的支出と修繕費の関係について、税務上はどのような例示があるかについて見ていきたいと思います。
    • 資本的支出の例示
    • 建物の避難階段の取付け等物理的に付加した部分にかかる費用の額
    • 用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額
    • 機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合のその取り替えに要した費用の内、通常取り替えの場合に要すると認められる費用の額を超える部分の金額
 
  • 修繕費の例示
  固定資産の修理・改良等のうち、通常の維持管理又は原状回復と認められる支出の例示は以下のとおりであります。
  • 建物の移えい又は解体移築の費用の額
  • 機械装置の移設に要した費用の額
  • 地盤沈下した土地を沈下前の状態に回復するために行う地盛りに要した費用の額
  • 地盤沈下による海水等の浸水害を防ぐ床上げ、地上げ又は移設に要した費用の額
  • 現に使用している土地の水はけを良くする等のために行う砂利、砕石等の敷設に要した費用の額
 
  1. 上記の1によっても資本的支出か修繕費か判断できない場合、以下のいずれかにより修繕費であるかどうかの判断を行うことが認められております。
    • 1件当たりの修理等に要した金額が60万円に満たない場合
    • 1件当たりの修理のために要した金額が修理等の対象となった固定資産の前期末における「取得価額」のおおむね10%相当額以下である場合
  2. 修繕費として損金算入が認められる例として下記ものが挙げられております。
    • 1件当たりの修理、改良等のために要した費用の発生金額が20万円に満たない場合
    • その修理、改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情からみて明らかである場合
 
  • 国税庁の質疑応答事例の中には下記の例もあげられております。
節電対策として蛍光灯をLEDランプに切り替える工事については節電効果などから資本的支出と考えることもできるが、LEDランプは建物付属設備の部品にすぎず、建物付属設備全体の「価値」を高めるとまでは言えないため、修繕費として処理することが認められております。
 
最後に、 実務上の判断は困難なことも多く、上記の事例などを参考にしつつ、事例ごとに慎重に判断することが必要となります。

Ⅲ 資本コスト

- 経営者が理解すべき経営指標 ―
 
2018年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードに明記されて以来、資本コストを意識した経営が注目されています。(コーポレートガバナンス・コードとは、上場企業がガイドラインとして参照する原則・指針です。2015年に策定、2018年と2021年に改訂されています。)企業活動を継続するためには、資金調達が欠かせません。しかし、資金を調達するのにもコストがかかります。資本コストに対してキャッシュフローが上回っている会社は優良な会社ですので、安定してキャッシュフローを生み出している会社として、銀行の審査も通りやすいです。
従って、資本コストをできるだけ抑えた経営を行うためには、資本コストについて正確に理解することが求められます。

■資本コストとは?

  1. 借入に対する債権者への利息の支払い
負債コストと呼ばれ、銀行等の債権者から借りた資金の金利や社債等の債権を発行する費用のことです。
例えば、10,000円を年利2%で1年間借り入れたとすると、1年後には10,200円の返済が必要です。10,000円を得るために200円のコストがかかったと言い換えられ、200円が負債コストとなります。
 融資の際の金利は金融機関によって異なります。融資を行う銀行側は、ハイリスクであればハイリターンを求めるためリスクの高い事業では金利が高くなる場合が多いです。また借入期間によっても変わるため、どの金融機関からどのくらいの期間融資を受けるかを慎重に検討する必要があります。
  1. 株主への配当
株主からの出資で調達した資本に対するコストを「株主資本コスト」と言います。投資家目線では、配当が株主資本コストです。株主の期待するリターンを還元できなければ、投資資金を引き上げられてしまうリスクがあります。そこで企業は、期待利回りを上回る配当を出すよう努めるのです。
 例えば、10,000円の株式を発行して資金調達を行うとします。仮に投資家が5%の配当を見込んで購入するとすれば、1年後(通常一定の条件を満たして保持した場合配当金が出ますが仮に1年後としています)に配当金が500円必要です。この500円が株主資本コストに当たります。ただし、実際の株価は企業価値や業績・情勢によって変化するので、例の通りになるとは限りません。また株主が抱える期待は様々なので、コストを的確に求めるのは難しいと考えられています。資本資産評価モデル(CAPM)等を用いて算出されることが多いです。

■資本コストの求め方

資本コストの求め方は複数あります。今回は代表的な「WACC」について述べます。

 WACCとは「Weighted Average Cost of Capital」の頭文字です。

 現在の事業価値を求める割引率として利用するものです。

  株主資本コストと負債コストをそれぞれの時価で加重平均したもので、日本語では加重平均資本コストと訳されることもあります。投資家が企業を判断する際に使用するNPV(正味現在価値)にもWACCが使われます。

 

  計算式  WACC=D/(D+E)×rD(1-T)+E/(D+E)×rE

 

WACCの計算式で使用している項目の意味は以下の通りです。

rE

株主資本コスト

E

株主資本

rD

負債コスト(実効税率影響前)

D

負債

 

 

T

実効税率

 

株主資本コストはCAPMで求められます。(実際にはCAPMの値に企業固有リスクが加算されます。)

 

  計算式  CAPM=F+(Rm-F)×β

 

CAPMの計算式で使用している項目の意味は以下の通りです。

F

リスクフリーレート

β

自社の個別株式のβ値

Rm

株式市場全体におけるCAPM

 

 

 

※用語解説

  株主資本:決算書である貸借対照表の純資産の部に記載される区分のひとつです。

  リスクフリーレート:無リスク金利と呼ばれ、理論的にリスクがゼロか、極小の無リスク資産から売ることのできる利回りを言います。

  CAPM:日本語では資本資産価格モデルと訳され、個別株式が持つβ値、その株式に投資している投資家がどのくらいの収益率を期待するのかを関係づけたフレームワークです。

  β値:個別株式のリターンのボラティリティと市場全体のポートフォリオのリターンのボラティリティの関係性を表した係数です。未上場企業のβ値を算出する際には、類似した上場企業のβ値を使用することが多いです。

 

資本コストは「コスト」なので、基本的には低い方が良いとされています。ただし、低ければ良いというわけではありません。業種や規模によって異なりますが、目安は5%~7%です。

業種別でみると、電力業・運送業のWACCは低く、医薬品・製造業全般のWACCは高いです。また、一般的

に株主資本コストの方が負債コストより大きく、中小企業の資本コストの方が大手企業の資本コストより大きくなります。

 会社の成長安定には資本の増強などで調達資金が重要になります。それにも戦略が必要になってきます。コロナ融資で資金をかなり市場に入れており、その元金返済が始まるピークの月です。参考にしていただければと思います。

 今月のブックマーク
「OneTab」
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セミナー情報

経理事務の省力化 WEBセミナーのご案内

いよいよインボイス制度が10月からスタートします。もう準備は進めておられると思いますが改正後は、経理事務への負担が増してまいります。経理事務の省力化のシステムは日々進化しておりますが、なかなか今までやってきたことの変化に抵抗のある方が多いのが現状です。そんな方向けにウェビナーで2回にわけて、最新の機能をご紹介させていただきます。
 この機会に是非今後の経理事務の省力化にお役立ていただきたいと思います。

☆ 第1回 銀行信販データ受信機能と電子納税のご紹介

●配信期間
令和5年9月1日(金)8:00~9月20日(水)24:00
●視聴時間
60分
●申込期限
8月24日(木)迄
●費  用
無 料

☆ 第2回 証憑保存機能による電子保存義務化への対応

●配信期間
令和5年10月2日(月)8:00~10月20日(金)24:00
●視聴時間
60分
●申込期限
9月15日(金)迄
●費  用
無 料
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