中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)

2026年8月号 No.420
経営のお役立ち情報
Ⅰキャッシュフロー経営
―経営者が見るべき数値―
「決算では黒字だったのに、なぜか預金残高が増えていない。」
「利益は出ているのに、毎月の支払いが苦しい。」
「利益は出ているのに、毎月の支払いが苦しい。」
中小企業の経営者の方から、このような相談を受けることがあります。
一見すると不思議に思えますが、「利益」と「お金(現金)」は同じではありません。この違いを理解し、日頃から資金繰りを意識した経営を行うことが、会社を安定して成長させるためには欠かせません。
■利益と資金繰りは別物
損益計算書は、一定期間にどれだけ利益が出たかを表すものです。一方、資金繰りは、実際に会社の銀行口座にいくらお金があり、どれくらいの支払いができる状態にあるかを表しています。
例えば、100万円の商品を販売し請求書を発行した場合、会計上は売上が計上され利益に反映されます。しかし、実際の入金が2か月後であれば、その間は会社に現金は入ってきませんが、仕入代金や給与、家賃、社会保険料、税金などは期日になると現金で支払う必要があります。
上記のように、会社が倒産する原因の多くは赤字ではなく、「支払う現金が不足すること」と言われています。これを防ぐためには、利益だけでなく資金繰りにも目を向けることが重要です。
■現金が減る主な要因
利益が出ているにもかかわらず資金が減る理由として、次のようなものがあります。
1.売掛金と在庫の見直し
資金繰り改善で効果が大きいのは、「売掛金」と「在庫」の管理です。
例えば、売掛金の回収サイトを60日から30日に短縮できれば、その分だけ現金が早く入ります。ま た、必要以上の在庫は現金が商品という形に変わっている状態です。在庫が増えすぎると保管コストや品質劣化のリスクも高まります。
2.設備投資は資金計画(資金繰り管理)と関連させること
設備投資は将来の成長のために必要ですが、投資額だけを見て判断するのは危険です。
例えば1,000万円の設備を購入した場合、会計上は耐用年数に応じて減価償却費を計上しますが、現金は購入時や借入返済時に大きく減少します。
そのため、設備投資を行う際は、以下の項目を含めて検討することが重要です。
・購入後の預金残高
・毎月の返済額
・売上増加の見込み
・投資回収期間
特に借入金の元本返済や最終決済額が巨額になっているローンの返済などには注意が必要です。
損益計算書では返済元本は経費になりませんが、実際には現金が会社から出ていきます。そのため、利益が出ていても返済額が大きい会社では資金繰りが苦しくなることがあります。
■経営者が毎月確認したいデータ
資金繰りを安定させるためには、毎月決算書を見るだけでは十分ではありません。次の数字を定期的に確認する習慣を推奨します。
- 預金残高
会社がすぐに使える現金がどれだけあるかを確認します。 - 売掛金残高
回収漏れや回収遅延がないかを確認します。 - 買掛金・借入金返済予定
今後数か月で必要となる支払額を把握します。 - 在庫金額
前年や前月と比較し、不自然に増えていないかを確認します。 - 月次利益
利益が計画どおり出ているかを確認します。
これらを毎月確認することで、資金不足の兆候を早めに発見できます。
■資金繰り表の作成
資金繰り表とは、今後数か月の入金予定と支払予定を一覧にした表です。これを作成することで、「来月の資金不足」「巨額な納税への備え」「賞与支給時期」「設備投資のタイミング」などを事前に把握できます。
問題が起きてから金融機関へ相談するよりも、早めに状況を把握し対策を講じることで、余裕を持った経営判断が可能になります。
経営環境が変化しやすい今だからこそ、「利益が出ているから安心」と考えるのではなく、「現金は十分に確保できているか」という視点を持つことが大切です。
TFGでは、決算書や試算表のご説明だけでなく、資金繰りやキャッシュフローの改善についてもサポートしております。設備投資の計画や借入金の返済計画、資金繰り表の作成など、お困りのことがございましたら、お気軽に担当者までご相談ください。
利益と現金の両方を意識した経営が、企業の安定した成長につながります。日々の経営判断にぜひお役立ていただければ幸いです。フォームの終わり
Ⅱ寄附金と交際費の税法上の違いについて
― それぞれの性質と取り扱いの違い―
寄付金と交際費はそれぞれ金品や物品の贈与といった部分もありますが、税法上は事業に関係がある場合には交際費、事業に関係がない場合には寄付金としてその性質により明確に区分されており、損金に算入される金額が異なります。
■ 交際費とは
税法上の交際費は、得意先や事業に関係のある者に対して接待、供応、慰安、贈答等のために支出するものをいいます。
■ 交際費から除かれるもの
次に掲げる費用は交際費等から除かれます。
1.専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
2.飲食等のために要する費用(社内のみは除く)であって、その支出する金額が飲食等に参加した者一人当たり10,000円以下である費用
なお、この規定は次の事項を記載した書類を保存している場合に限り適用されます。
(1)飲食等のあった年月日
(2)飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係
(3)飲食等に参加した者の数
(4)その飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称および所在地(店舗がない等の理由で名称または所在地
が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名または名称、住所等)
(5)その他飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項
■ 寄附金とは
寄附金とは、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、法人が行った金銭その他の資産または経済的利益の贈与または無償の供与をいいます。
また、資産を低額で譲渡等した場合に、時価と譲渡価額との差額が寄付金とされる場合があります。
■ 損金算入金額
1.交際費の損金算入額
交際費は原則として、損金不算入とされていますが、表のとおり、例外として期末の資本金の額に応じ、一定の金額が損金として認められています。
期末の資本金 | 損 金 算 入 額 |
1億円以下※ | 以下のうちいずれかの金額 ・交際費等の額のうち年間800万円まで ・交際費等の額のうち年間800万円まで飲食その他に類する行為のために要する費用(社内のみは除外)の50% |
1億円超100億円以下 | 飲食その他に類する行為のために要する費用(社内のみは除外)の50% |
100億円超 | なし |
※資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人の100パーセント子法人等を除く
2.寄附金の損金算入額
寄附金の損金算入額は以下の合計額となっています。支出先によって、損金となる範囲が異なっており、公共性が高いほど損金算入限度額が多くなっています。
支出先 | 損 金 算 入 額 |
国、地方公共団体、公益法人等への寄附金 | 支出した金額 |
特定公益増進法人への寄附金 | ・支出した金額 ・(期末資本金等額×12/12×3.75/1,000+所得金額×6.25/100)×1/2 のいずれか少ない金額 |
上記以外への寄附金 | ・支出した金額 ・(期末資本金等額×12/12×2.5/1,000+所得金額×2.5/100)×1/4 のいずれか少ない金額 |
Ⅲ 事業承継とスモールM&A(PartⅠ)
―後継者不足と小さく買って事業を大きくするー
日本の中小企業は現在、経営者の高齢化と後継者不足がもたらす「大廃業時代」の岐路に立たされています。特に深刻なのが、十分な利益を上げているにもかかわらず幕を閉じる「黒字廃業」の急増です。
経済産業省などの試算によると、今後数年間のうちに、中小企業経営者の多くが引退平均年齢である70歳を超えるとされています。そのうちの約半数が後継者を決定できておらず、放置すれば日本企業 の数分の一が消滅しかねない未曽有の「大廃業時代」が現実味を帯びて、長年培われた技術や伝統が、引き継がれることなく失われようとしています。
■事業承継における3つの選択肢と課題
1.親族内承継
伝統的な手法であり心情的理解を得やすいが、少子化や価値観の多様化により、能力と意欲を兼ね備えた後継者の確保が極めて困難となっています。
2.社内承継
実務に精通した役員や従業員に引き継ぐため業務の連続性を保てる反面、後継者候補に株式を買い取るための巨額の資金力が不足しているケースが多く、個人保証の引き継ぎも大きな障壁となります。
3.第三者承継(スモールM&A)
社内外に候補者がいない場合の有力な解決策であり、企業の存続やシナジー効果を期待できるが、買い手とのマッチングの難航や経営理念の不一致による従業員の離職リスクを伴います。
■スモールM&Aがもたらす4つの経営者メリット
1.創業者利益の確保(リタイアメント資金の獲得)
親族内や社内での承継では、後継者に資金力がないため、株式を無償譲渡するか低価格で譲らざるを得ないケースが大半です。
(1)企業価値の現金化
スモールM&Aでは、買い手企業から適正な市場価格で株式や事業が買い取られます。
(2)努力の報奨
長年築き上げてきたノウハウ、顧客基盤、ブランドが「のれん代(営業権)」として正当に評価されます。
(3)第二の人生の原資
経営者は引退時にまとまった創業者利益(現金)を確保でき、豊かな老後資金や新しい事業への投資資金に充てることが可能になります。
2.経営者の個人保証からの解放(精神的負担の解消)
多くの中小企業経営者は、会社の銀行融資に対して「個人保証(連帯保証)」を設定しています。これが事業承継を進める上での最大の心理的・経済的障壁となっています。
(1)債務の引継ぎ
M&Aが成立すると、買い手企業が対象会社の債務を実質的に引き受けるか、買い手の資金力によって融資をリファイナンスします。
(2)保証の解除
原則として前経営者の個人保証や自宅などの担保は解除されます。
(3)家族への安心
万が一の場合や事業がうまくいかない場合、個人保証などにより家族への迷惑をかけることからも解放されます。
3.従業員の雇用の維持(組織の安定)
自主廃業を選んだ場合、どれだけ業績が良くても従業員は全員解雇となります。これは経営者にとって最も苦渋の決断となります。
(1)雇用の継続
スモールM&Aでは、株式譲渡等の手法を用いることで、原則として従業員の雇用契約や給与条件がそのまま新しい親会社へ引き継がれます。
(2)キャリアの保護
長年会社を支えてくれたスタッフの生活を守り、その技術や経験を未来へ活かす場を残すことができます。
(3)取引先への配慮
仕入先や外注先との取引も維持されるため、サプライチェーンを傷つける心配もありません。
4.シナジー効果による企業の更なる発展(成長の加速)
スモールM&Aは、単なる「会社の延命」ではなく「攻めの選択」です。買い手企業が持つ豊富な経営資源と融合することで、自社単独では成し得なかった成長軌道を描くことができます。
(1)販売網の拡大
買い手の持つ営業力や知名度を活用し、自社商品を全国展開します。
(2)バックオフィスの効率化
採用、総務、経理などの管理部門を買い手側と統合し、コストを削減します。
(3)従業員のモチベーション向上
大手・優良企業のグループ傘下に入ることで、福利厚生が充実し、若手社員の採用や定着にも好影響を与え、モチベーションが向上します。
今回は、メリットについてお伝えいたしました。後継者がいるのであれば、今の会社を継いでもらうのが一番早くて安心できますが、すべての会社で後継者がいるわけではございません。廃業を考えている経営者がほとんどだと思います。選択肢の一つとしてお考えいただければと思います。次月(Part2)では、成功へのプロセスをお届けします。
今月のアプリケーション
「Udemy」
世界で8000万人に選ばれる学習プラットフォームです。スキルを身に着けたいなら一度覗いてみてください。 https://www.udemy.com/?
TFG夏季休暇のご案内
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編集委員長 藤本 清
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