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TFGニュース 2026年6月号

中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)
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2026年6月号 No.418
経営のお役立ち情報

Ⅰ2026年度税制改正

―会社経営への影響まとめ―
 2026年度税制改正の内、下記の項目について、会社経営への影響についてまとめて記載しております。各項目について皆様の会社での状況に合わせ優先順位をつけてご検討されてはいかがでしょうか。

■賃上げ促進税制の拡充

 2026年度税制改正では、「賃上げ」が大きなテーマとなっています。政府は、物価上昇に対応しながら個人消費を活性化させるため、企業に対して継続的な賃上げを求めています。そのため、一定以上の給与増加を行った企業については、法人税額から控除できる「賃上げ促進税制」が拡充される方向となっています。
特に中小企業については、これまでより制度を活用しやすくする見直しが進められており、赤字企業への配慮や繰越措置なども注目されています。ただ、単純に給与を引き上げればよいというわけではありません。教育訓練費の増加や人材育成への取り組みが条件となるケースもあり、「人への投資」を重視する流れが強まっています。
現在、多くの中小企業では、人材不足が深刻な問題となっています。採用活動をしても応募が少ない、若手が定着しないという悩みを抱える経営者も少なくありません。そのような中で、給与体系の見直しや職場環境改善を行い、「働き続けたい会社」を作ることが重要になっています。
今回の税制改正は、単なる節税制度ではなく、「人を大切にする経営」を後押しする制度といえるでしょう。経営者としては、税額控除だけを見るのではなく、社員定着や将来の組織づくりという視点から制度を活用することが求められます。

■設備投資・DX投資への支援強化

 中小企業投資促進税制や経営強化税制についても、引き続き重要な改正ポイントとなっています。近年は人手不足や業務負担増加への対応として、「省力化投資」や「DX投資」の必要性が高まっています。
例えば、クラウド会計システム、販売管理システム、AI活用、自動化設備などへの投資について、即時償却や税額控除が認められる制度が継続される見込みです。特に中小企業では、まだ紙ベースや手作業中心の業務が多く残っているケースもあり、業務効率化は大きな課題です。
 税理士の業界でも電子帳簿保存法やインボイス制度への対応により、従来のやり方では業務が回らなくなってきています。経理業務を効率化しなければ、慢性的な人手不足に対応できない時代になっています。
一方で、設備投資には慎重な判断も必要です。「補助金があるから」「税制優遇があるから」という理由だけで導入すると、十分に活用できず、かえって固定費負担が増えるケースもあります。
大切なのは、「その投資が将来の利益改善につながるか」という視点です。単なる節税目的ではなく、経営改善や生産性向上につながる投資であるかを十分に検討する必要があります。

■インボイス制度・電子帳簿保存法への対応

 インボイス制度や電子帳簿保存法については、制度開始後も多くの企業で混乱が続いています。特に中小企業では、経理担当者への負担増加を強く感じているケースが多く見受けられます。
請求書の保存方法、電子データ管理、取引先対応など、従来よりも確認事項が増え、「経理業務が煩雑になった」と感じる経営者も少なくありません。建設業、運送業、飲食業などでは、現場と事務処理の連携が難しく、対応に苦労しているケースもあります。
 しかし、今後は「紙中心」の管理方法では限界があることも事実です。今回の制度改正をきっかけに、経理業務のデジタル化を進める企業も増えています。
 例えば、クラウド会計の導入により、請求書管理や銀行連携が効率化され、試算表作成のスピード向上につながるケースもあります。また、経営数字をリアルタイムで把握できるようになれば、経営判断の精度向上にもつながります。
税制改正への対応は、「面倒な制度対応」と考えるだけではなく、「業務改善のチャンス」として前向きに捉えることが重要ではないでしょうか。

■事業承継対策の重要性

 中小企業経営者の高齢化が進む中、事業承継問題はますます重要になっています。後継者不足に悩む企業も多く、「会社をどう引き継ぐか」は大きな経営課題です。
 事業承継税制では、自社株の贈与・相続に関する納税猶予制度がありますが、適用には事前計画や認定申請など、複雑な手続きが必要です。そのため、「まだ先の話」と考えていると、準備が間に合わないケースもあります。
 また、事業承継は単なる税金対策ではありません。後継者育成、取引先との関係整理、役員体制の見直しなど、多くの準備が必要になります。特にオーナー企業では、「経営者個人」と「会社」が密接に結びついていることが多く、相続問題が経営へ大きな影響を与える場合もあります。
 最近では、親族承継だけでなく、従業員承継やM&Aを検討する企業も増えています。どの方法が自社に合っているかを早めに検討し、専門家と相談しながら進めることが重要です。

■金利上昇時代の資金繰り対策

 長く続いた低金利時代にも、少しずつ変化が見え始めています。金利が上昇すれば、借入金の返済負担も増加し、企業経営へ影響を与える可能性があります。
 これまでは、「借りやすい時代」であったため、設備投資や資金調達を積極的に行ってきた企業も多いと思われます。しかし、今後は「返済できるか」という視点がこれまで以上に重要になります。
 特に、利益率が低い企業では、金利上昇による影響が大きくなる可能性があります。そのため、毎月の試算表確認や資金繰り管理の精度向上が必要不可欠です。
 また、金融機関との関係づくりも重要になります。普段から業績説明や資金計画を共有しておくことで、必要な時に相談しやすい関係を築くことができます。
 これからの時代は、「売上を伸ばす」だけでなく、「資金をどう残すか」が経営の大きなテーマになるでしょう。
 2026年度税制改正は、「未来へ向けた経営改革」を後押しする内容が多く含まれています。賃上げ、人材育成、DX投資、事業承継、資金繰り対策など、経営課題と税制が密接に結びつく時代になっています。
税制は毎年変わりますが、本当に重要なのは、「自社の経営課題にどう活用するか」です。単なる節税ではなく、会社の未来づくりという視点で制度を活用することが、これからの中小企業経営には求められていると考えます。

Ⅱ個人事業主にかかるインボイス制度の3割特例

―3割特例・簡易課税・本則課税の比較、選択―
 令和5年10月のインボイス制度に伴い創設された消費税の2割特例が予定通り令和8年9月30日に終了し、個人事業主については、新たに3割特例が創設されました。3割特例の内容と簡易課税や本則課税との比較についてみていきます。

■2割特例とは

 インボイス制度の2割特例とは、消費税の納税額を売上消費税額の2割とみなす制度です。2割特例は、  令和8年9月30日までの限定措置であり、個人事業主の場合には令和8年分の確定申告までの適用となります。

■3割特例とは

 インボイス制度の3割特例とは、消費税の納税額を売上消費税額の3割とみなす制度であり、令和9年と令和10年の2年間限定です。3割特例の対象は基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円を超えていない個人事業主である課税事業者です。対象となる個人事業主は、事前の手続は必要なく、確定申告で3割特例の適用を選択するだけで制度を利用することができます。

■3割特例・簡易課税・本則課税の比較、選択

 3割特例を適用できる個人事業主は消費税の納税額の計算方法として簡易課税や本則課税といわれる計算方法と3割特例による計算方法を比較して選択適用することができます。
1.本則課税
 本則課税とは、消費税納税額の原則的な計算方法であり、売上の消費税額から仕入や経費の消費税額を差し引いて、差額を国に納める計算方法です。仕入れや経費の消費税額が多い事業者についてはメリットがあり、大規模な設備投資等により仕入れや経費の消費税額が売上の消費税額を上回る場合には消費税が還付されることがあります。しかし、支払った仕入や経費のすべての領収書やインボイスを保存して消費税額を計算する必要があり、事務負担が大きくなります。
 
2.簡易課税
 簡易課税とは、実際の仕入れや経費の消費税額に関わらず、業種ごとの「みなし仕入率」を用いて、簡便的に消費税納税額を計算する方法であり、基準期間(前々年度)の課税売上高が5,000万円以下である事業者について適用できます。みなし仕入率は、卸売業90%、小売業80%、製造業・建設業等70%、飲食業等60%、サービス業50%、不動産業等40%となっており、業種によっては3割特例より有利になる業種もあります。簡易課税の適用を希望する場合には、本来課税期間が開始する前に届出をする必要がありますが、前年まで2割特例や3割特例の適用を受けていた個人事業主については、その年分から簡易課税の適用を希望する場合には、その年の翌年3月31日(土日の場合翌月曜日)までに届出を行えば、適用を受けることができます。
 
3.有利判定のシミュレーション例
 自身の業種や売上にかかる消費税額、経費にかかる消費税額を考慮して、以下のようなシミュレーションを行い、有利になる消費税納税額の計算方法を選択する必要があります。
 (1)共通条件
    課税売上にかかる消費税額100万円
 (2)3割特例の場合
    100万円×30%=消費税納税額30万円
 (3)簡易課税の場合(みなし仕入率が50%の場合)
    100万円×50%=50万円
    100万円-50万円=消費税納税額50万円
 (4)本則課税の場合(経費にかかる消費税額が60万円の場合)
    100万円-60万円=消費税納税額40万円

Ⅲ AI活用術の独自10選

― AIにこんな活用方法―
 近年、AIの進化によって企業経営のあり方は大きく変わり始めています。これまでAIというと、大企業だけが活用する高度な技術というイメージがありました。しかし現在では、中小企業でも簡単に導入できる生成AIが登場し、経営・営業・人事・マーケティングなどあらゆる分野で成果を生み出しています。
 特に人手不足や市場競争の激化が進む中、限られた人員で高い成果を出すためには、AIの活用は避けて通れないテーマとなっています。
 重要なのは、AIを単なる「作業の自動化ツール」として捉えるのではなく、「社員の能力を拡張し、経営判断の質を高めるパートナー」として活用することです。今月は独自の視点でこれは!と思える10の使い方をご紹介しましょう。
 
1.会議の議事録作成とアクション管理
 企業では日々さまざまな会議が行われています。しかし実際には、会議終了後に議事録を作成し、内容を整理し、関係者へ共有する作業に多くの時間が費やされています。
例えば1時間の会議を行った場合、議事録作成だけで30分から1時間かかることも珍しくありません。また、決定事項や担当者が曖昧なまま終わり、会議が実行につながらないケースもあります。
AIを活用すると、会議の録音データから発言内容を文字起こしし、決定事項・課題・担当者・実施期限・次回までの宿題などを自動的に整理できます。
 これにより、会議後すぐに関係者へ共有できるだけでなく、実行管理まで行えるようになります。
経営者にとって重要なのは「会議の数」ではなく「会議の成果」です。AIは会議を実行につなげる強力な支援ツールになります。

2.提案書・企画書の作成支援
 営業提案書や事業計画書、補助金申請書などの作成には多くの時間がかかります。
担当者は、情報収集・データ整理・構成検討・文章作成という工程を経るため、1つの資料作成に数日かかることもあります。
 AIを活用すれば、必要な条件を入力するだけで企画書の骨子を短時間で作成できます。
 例えば、「製造業向け生産管理システム導入提案書を作成したい」と入力すると、現状課題・改善案・導入ステップ・投資対効果・導入事例まで整理された提案書の下書きを作成できます。
 資料作成時間が短縮されることで、社員は顧客訪問や市場開拓など、より付加価値の高い業務に時間を使えるようになります。

3.市場調査・競合分析
 新規事業を始める際や新商品を開発する際には、市場調査が欠かせません。しかし市場分析には、業界情報の収集・市場規模の確認・競合企業の調査・顧客ニーズ分析など多くの工程が必要です。
AIは大量の情報を整理することが得意です。
例えば、「大阪府内で介護関連サービスを展開する場合の市場性を分析してほしい」と依頼すると、
市場規模・成長性・顧客ターゲット・競合企業・差別化ポイントを短時間で整理できます。
 経営者が意思決定を行う際の判断材料を効率的に集められるため、事業展開のスピードが大幅に向上します。

4.営業活動の高度化
 営業担当者は本来、顧客との関係構築や提案活動に時間を使うべきです。しかし実際には、メール作成・商談準備・提案資料作成・報告書作成などの事務作業に多くの時間を費やしています。
AIはこうした準備業務を支援できます。顧客情報を入力するだけで、商談シナリオ・想定質問・回答例・提案資料構成などを作成できます。
その結果、営業担当者はより多くの顧客と接点を持つことができ、売上向上につながります。

5.マーケティング・情報発信
 どれだけ優れた商品やサービスを持っていても、顧客に知られなければ売上にはつながりません。現在は、SNS・ブログ・YouTube・メールマガジンなど継続的な情報発信が重要になっています。
AIを活用すると、一つのテーマから複数の媒体向けコンテンツを作成できます。
例えば新商品発売の情報から、Instagram投稿・Facebook記事・ブログ記事・動画台本を一度に作成できます。発信頻度が高まることで企業認知度が向上し、新規顧客獲得につながります。

6.顧客対応の自動化
 顧客からの問い合わせ対応は企業にとって重要ですが、人件費もかかります。特に、営業時間・料金納期・商品説明など同じ質問が繰り返されるケースは少なくありません。
AIチャットボットを導入することで24時間対応が可能になります。社員は単純な問い合わせ対応から解放され、提案活動や顧客フォローなど付加価値の高い業務へ集中できるようになります。

7.採用活動の効率化
 人材不足が深刻化する中で、採用活動は経営上の重要課題です。AIは、求人票作成・募集要項作成・面接質問設計・評価シート作成などを支援できます。また、求める人物像を明確にすることで、採用のミスマッチを減らす効果も期待できます。

8.教育・人材育成
 企業成長の源泉は人材です。しかし教育には時間とコストがかかります。AIを活用すれば、マニュアル作成・研修資料作成・テスト問題作成・ケーススタディ作成などを効率化できます。
さらにベテラン社員のノウハウを文章化し、組織全体で共有できるため、属人化の防止にもつながります。

9.経営数字の分析
 経営において数字の把握は欠かせません。しかし、売上データ・利益データ・顧客データを分析するには専門知識が必要です。AIを活用すると、「利益率が低下している原因は何か」「どの商品が利益を生み出しているのか」「どの顧客層が最も収益性が高いのか」などを分析できます。
感覚ではなくデータに基づく経営が可能になります。

10.AIを経営参謀として活用する
 最も大きな価値はここにあります。AIは経営者の壁打ち相手になります。例えば、売上向上策・新規事業アイデア・組織改革・人材育成・利益改善策について相談すると、多角的な視点から提案を受けられます。経営者は日々孤独な意思決定を迫られます。
AIは24時間いつでも相談できる「経営参謀」として機能し、思考の整理や新しい発想の創出を支援してくれます。
 
 AI導入の本質は、人件費削減ではありません。本当の目的は、「社員一人ひとりの能力を高めること」そして、「経営者の意思決定スピードと精度を向上させること」です。これからの時代は、「AIを導入している企業」と「導入していない企業」の差ではなく、「AIを経営戦略に組み込んでいる企業」と「単なる便利ツールとして使っている企業差が競争力の差になります。
AIを活用することで、限られた人材でも高い成果を生み出せる組織づくりが可能になり、持続的な企業成長につながるのです。
 

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