中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)

2026年4月号 No.416
経営のお役立ち情報
Ⅰ決算書で見るべきポイント
―社長が抑えるべき数字―
「中小企業経営において、会社の決算書は、単なる税金計算のための書類ではなく、「会社の現状と将来」を読み解くための重要な資料です。しかし実際には、「数字が多くて分かりにくい」「税理士に任せていて詳しく見ていない」という経営者の方も少なくありません。本来、決算書は経営者自身が意思決定に活用すべきものです。難しい分析をすべて行う必要はありませんが、最低限押さえるべきポイントを理解しておくことで、経営の精度は大きく向上します。今回は、専門的な知識がなくても押さえておきたい「重要な数字」に絞って解説します
■売上高(会社の規模と成長性)
最初に確認すべきは「売上高」です。売上は会社の規模を表す最も基本的な指標であり、事業の成長性を判断する材料になります。
重要なのは単年度ではなく、「前年との比較」や「数年間の推移」です。売上が安定的に伸びている場合は、商品・サービスが市場に適合している可能性が高いといえます。ただし、売上の増加が必ずしも良いとは限りません。売上拡大の裏側で、資金繰りや利益率が悪化していないかという視点もあわせて持つことが重要です。
■営業利益(本業の収益力)
営業利益は、本業によってどれだけ利益を生み出しているかを示す指標です。
売上が伸びていても営業利益が減少している場合、値引きのしすぎやコスト増加などにより、採算が悪化している可能性があります。
営業利益が安定している会社は、ビジネスモデルが確立されていると評価されます。また、営業利益率を見ることで「どれだけ効率よく稼げているか」も把握できます。
■経常利益(会社全体の稼ぐ力)
経常利益は、本業の利益に加え、利息収支なども含めた会社全体の収益力を示します。
営業利益が出ていても、借入金の利息負担が大きければ経常利益は圧迫されます。この場合、財務体質の見直しが必要です。経常利益は、会社の総合的な収益力を測る重要な指標です。
■自己資本比率(会社の体力・安全性)
自己資本比率は、総資産に対する自己資本の割合を示し、会社の安全性を測る指標です。
利益を積み上げることで自己資本は増加し、会社の体力は強くなります。逆に低い状態が続くと、借入依存が高くなり、経営の安定性が低下します。重要なのは「継続的に改善しているかどうか」です。
■現預金残高と運転資本(資金繰りの実態)
最後に最も重要なのが「現預金残高」と「運転資本」です。現預金は会社の生命線であり、目安としては月商の2~3か月分を確保しておくことが望ましいと言われています。
しかし、現預金の残高だけを見て安心するのは危険です。重要なのは、その裏側にある「運転資本」の動きです。
運転資本とは「売掛金+在庫-買掛金」で表され、事業を回すために必要な資金です。売上が伸びると売掛金や在庫が増加し、資金が外に出ていきます。一方で、買掛金は支払いを先送りできるため、資金負担を軽減する役割を持ちます。つまり、成長している会社ほど資金繰りが厳しくなる可能性があり、これが黒字倒産の原因となることもあります。
■運転資本を改善するための具体策
資金繰りを安定させるためには、運転資本のコントロールが不可欠です。以下のような施策を実務的に検討することが重要です。
1.売掛金の回収を早める
・回収サイト(入金期限)の短縮交渉
・入金遅延先へのフォロー強化
売上があっても回収が遅ければ資金は増えません。回収スピードの改善は最も効果的な資金 対策です。
2.在庫を適正水準に抑える
・滞留在庫の洗い出し
・発注量の見直し
・売れ筋・不良在庫の分析
在庫は「現金が眠っている状態」です。過剰在庫は資金繰りを圧迫するため、定期的な見直 しが必要です。
3.買掛金の支払条件を見直す
・支払サイトの延長交渉
・支払タイミングの調整
無理のない範囲で支払いを後ろ倒しにすることで、資金の流出を抑えることができます。ただし、取引関係への影響には十分配慮が必要です。
4.資金繰りの“見える化”を行う
・資金繰り表の作成
・月次での資金残高の把握
将来の入出金を把握することで、「いつ資金が不足するか」を事前に予測できます。これにより、早めの対策が可能になります。
5.利益と資金の違いを意識する
利益が出ていても資金が不足するケースは多くあります。
「利益=現金ではない」という認識を持つことが、資金管理の第一歩です。
■まとめ
決算書を見るうえで、押さえるべき数字は以下の通りです。
・売上高(成長性)
・営業利益(本業の収益力)
・経常利益(総合的な稼ぐ力)
・自己資本比率(安全性)
・現預金残高と運転資本(資金繰り)
・営業利益(本業の収益力)
・経常利益(総合的な稼ぐ力)
・自己資本比率(安全性)
・現預金残高と運転資本(資金繰り)
これらを継続的に確認し、その背景にある原因を考えることが、経営改善につながります。決算書は過去の結果であると同時に、未来へのヒントでもあります。数字を「見る」だけでなく「活かす」ことで、より安定した経営が実現できるでしょう。
Ⅱ法人所有の社宅を役員に貸付けた場合の取扱い
―賃料相当額の計算と税務上のメリット、デメリット―
経営者の方の住宅を「法人名義で買うと節税になる」と耳にしたことがあるかもしれません。
法人所有の住宅を役員に社宅として貸し付けた場合の税務上の取り扱いやメリット、デメリットを見ていきます。
■概要
法人所有の住宅を役員に貸し付ける場合には、役員から1か月当たり一定額の家賃(以下「賃貸料相当額」といいます。)を受け取っていれば、役員に対する給与とされず、課税されません。
■賃料相当額の計算
賃貸料相当額は、役員に貸し付ける社宅の床面積により「小規模な住宅(※1)」と「小規模な住宅以外の住宅」とに分けて、次のように計算します。ただし、この社宅が、社会通念上一般に貸与されている社宅と認められないいわゆる豪華社宅(※2)である場合は、次の算式の適用はなく、通常支払うべき使用料に相当する額が賃貸料相当額になります。
(※1)小規模な住宅とは、法定耐用年数が30年以下の建物の場合には床面積が132㎡以下である住宅、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には床面積が99㎡以下(区分所有の建物は共用部分の床面積を按分し、専用部分の床面積に加えたところで判定します。)である住宅をいいます。
(※2)いわゆる豪華社宅であるかどうかは、床面積が240㎡を超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定します。なお、床面積が240㎡以下のものであっても、一般に貸与されている住宅等に設置されていないプール等の設備や役員個人の嗜好を著しく反映した設備等を有するものについては、いわゆる豪華社宅に該当することとなります。
1.役員に貸し付ける社宅が「小規模な住宅」の場合の賃料相当額
次の(1)から(3)までの合計額が賃貸料相当額になります。
(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(2)12円×(その建物の総床面積(㎡)/(3.3㎡))
(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
2.役員に貸し付ける社宅が「小規模な住宅」でないの場合の賃料相当額
次の(1)と(2)の合計額の12分の1が賃貸料相当額になります。
(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%
ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12%ではなく、10%を乗じます。
(2)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%
■ 給与として課税される範囲
1.役員に無償で貸し付ける場合
賃貸料相当額が、給与として課税されます。
2.役員から賃貸料相当額より低い家賃を受け取っている場合
賃貸料相当額と受け取っている家賃との差額が給与として課税されます。
■ 税務上の主なメリット
法人名義で物件を購入すると、その住宅にかかる以下のような費用を、法人の経費(損金)として計上することができます。
1.建物の減価償却費
建物の購入費用は、法定耐用年数に応じて毎年減価償却費として損金算入できます。
2.各種税金
不動産取得税、固定資産税・都市計画税といった税金を損金に算入できます。
3.維持管理費
管理会社へ支払う管理費や修繕積立金、火災保険料などが損金となります。
4.借入金利子
物件購入のために銀行から融資を受けた場合、その支払利息も損金となります
■ 税務上の主なデメリット
1.住宅ローン控除が使えない
個人で住宅ローンを組んで住宅を購入した場合には、年末の住宅ローンの残高に応じて、所得税額から一定額を控除できる、いわゆる「住宅ローン控除」という制度がありますが、法人名義で購入した場合には、この住宅ローン控除を使うことができません。
2.住宅の売却益の税率が高くなる可能性がある
法人名義で購入した住宅を売却する場合には、法人税(実効税率約25%~34%程度)が課される可能性があり、個人で購入し、長期間所有(5年超所有)した住宅を売却した場合の税率約20%に比べ税率が高くなる可能性があります。
Ⅲ地頭の正体
― 高学歴=仕事のできる人?―
「高学歴なのに仕事ができない」と言われる人がいる一方で、特別な学歴がなくても成果を出し続ける人がいます。その差は「地頭」の違いではないでしょうか。暗記力や知識量ではなく、正解のない状況で自分の頭で考え抜く。その思考は、日々の小さな習慣の積み重ねで鍛えられます。学歴と関係なく「この人は優秀だ」と感じる人に会ったことはだれしもあることだと思います。例えば仕事を依頼するとき、仕事内容を1から10まで説明しなくても、少し話しただけで理解して成果を出せるような人がいます。これは経験なのでしょうか。地頭を今回紐解いていきましょう。
■学力の高さではなく柔軟な思考力が問われる時代
1. 学力の高さ
学生時代はテストで正解を出す力と言い換えられるのではないでしょうか。
一昔前は言われたことを正確にやる人が優秀。
2. 柔軟な思考力
情報はすぐに見つかるため、どう使うか、どうつなげるかの時代
変化に対応できる思考力の持ち主
3. 知識は必要だが
1+1=2のように質問→解答のような時代ではなく、さまざまな知識や教養をつなぎ合わせて人に伝えたり新たな何かを生み出したりできる能力が重要視される時代
■「地頭が良い」の定義
1. 論理的思考ができる
感覚や感情やクリエイティブで判断するのではなく、物事を根拠や陰画に基づいて整理・判断ができる。
2.仮説を立てる能力がある
限られた情報から推測し、筋の通った仮の答え(仮説)を立て、そこから検証・判断を進めるような思考ができる能力がある。
3.フレームワークを活用または、思考ができる
物事を考えたり整理したりするときに、あらかじめ考えられる事象を整理し、効率よく抜けや漏れがないように考えられる。または現在あるフレームワークを活用して考えたり構造化したりできる能力がある。
4.抽象化思考ができる
個別の出来事や事象から共通点や本質を抽出してより一般化された「意味」や「型」に昇華することができる。そしてその反対、抽象的な内容に対して具体例を交えて説明ができる能力がある。
5.状況の理解と判断ができる
1から10まで全て教えなくても、周りがしていることを見たり、状況から推測したりすることで、大枠を把握して動ける能力。見て学ぶ能力がある。
■地頭の良い人の共通項
1.理由が気になる
常にWhy?が浮かんで聞き流さない。検証する癖がついている。
2.聞いた話を人にしたい
インプットして消化しないと人に話すことができません。
3.責任感が強い
間違ったことを伝えられないため、言葉の解像度が高く、いろいろな語彙や表現の幅を持ちます。
4.面倒くさがり
少しでも楽をしようと深く考える習慣がついています。
まじめな人ほど言われたとおりにしてしまうため工夫する機会がありません。Why?の多さが最終的には大きな差になるのではないでしょうか。
今月のアプリケーション
「Everything」
あらかじめPCに接続された全ドライブのインデックスを作成しておくことでローカルに保存されたcファイルをファイル名で高速に検索できます。 https://www.voidtools.com/
TFGでは経営管理システムの一環として国際基準のISOにも従来より取り組んでおり、また経営計画策定や事業承継、相続対策等に関する支援等についてのコンサルティング業務、中小M&Aなどご遠慮なくご連絡ご相談下さいませ! |
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編集委員長 藤本 清
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