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TFGニュース 2025年12月号

中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)
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2025年12月号 No.412
経営のお役立ち情報

Ⅰ個人事業について損失が生じた場合

― 損益通算・繰越控除―
 事業所得などに損失(赤字)の金額がある場合で、損益通算の規定を適用してもなお控除しきれない部分の金額(純損失の金額)が生じたときには、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除します。

■ 損益通算できる所得

 損益通算とは赤字の所得と黒字の所得を相殺する制度です。赤字を損益通算できる所得は以下の4つに限定されています。
事業所得
事業から生じる所得
不動産所得
不動産の貸付で生じる所得
総合課税の譲渡所得
資産(土地建物、株式、生活に通常必要でない資産を除く)を譲渡した際に生じる所得
山林所得
山林を伐採して譲渡又は立木のまま譲渡した場合に生じる所得
 なお、上場株式等の譲渡損失については、上場株式等の配当等との通算は可能です。


■ 事業所得に赤字が生じた場合の損益通算の順序

 上記4つの所得の赤字について損益通算ができますが、今回は事業所得の赤字についての損益通算の順序を見ていきます。
1.第一ステップ
  事業所得の赤字と不動産所得、配当所得(総合課税)、給与所得、雑所得(総合課税)の黒字と通算
  ・・・以下「Aグループの通算」といいます。
2.第二ステップ
  総合課税の譲渡所得の赤字がある場合には一時所得の黒字と通算
・・・以下「Bグループの通算」といいます。
3.第三ステップ
 Aグループの通算を行ってもなお引ききれない赤字の金額は、Bグループの通算後の黒字の金額と通算
4.第四ステップ
  第三ステップでも引ききれない赤字の金額は山林所得の黒字の金額と通算
5.第五ステップ
  第四ステップでも引ききれない赤字の金額は退職所得の金額と通算

■ 純損失の繰越控除を適用できる所得

上記の損益通算の規定を適用しても控除しきれない部分の金額(純損失の金額)は翌年以降3年間繰り越すことができます。なお、純損失の金額の繰越は、損益通算と同様に事業所得、不動産所得、総合課税の譲渡所得、山林所得の赤字について適用することができます。なお、上場株式等の譲渡損失については上場株式等の譲渡益、上場株式等の配当等からの控除は可能です。

■ 純損失の繰越控除の要件

純損失の金額が生じた年分の青色申告書を提出し、その後の年分の確定申告書を連続して提出している場合に限り、翌年以降3年間の所得の金額から控除することができます。ただし、純損失の金額を、その純損失が生じた年の前年の所得から控除して再計算を行い、還付を受ける「純損失の繰戻還付」を受けている場合には、その繰戻還付を受けた純損失の金額は除きます。

■ 純損失の繰越控除の順序

1.古い年の純損失から控除
  複数年について純損失の金額がある場合には、最も古い年分の純損失の金額から控除します。
2.控除年の損益通算との順序
  控除年に損益通算がある場合には、損益通算→純損失の繰越控除の順で行います。また、その純損失の金額は、順に総所得金額、山林所得、退職所得の金額から控除を行います。ただし、山林所得について生じた純損失の金額は、まず山林所得の金額から控除し、次に総所得金額、退職所得の金額から控除します。

 万が一赤字が生じた場合は、通算できる場合があります。上記のような判断基準を持ちつつご相談されれば余分な税金を支払うことはないでしょう。あくまで税金は自己申告となり自己責任となりますので、わからない場合はご相談されるのが賢明でしょう。
 

Ⅱ交際費・福利厚生費の判定の留意点

― 実務上の留意点を中心にして -
 法人税の申告実務において、交際費等の取扱いは今なお誤りが多く、税務調査でも頻繁に指摘を受ける項目です。特に、得意先等への接待費用、社内行事の費用、慶弔見舞金、飲食代の負担などは、交際費・福利厚生費・寄附金等のいずれに該当するかで課税所得に大きな影響を与えます。ここでは、最近の事例や留意点を踏まえて整理します。

■交際費等の範囲

 交際費等とは、法人が得意先や仕入先その他事業に関係のある者に対して行う接待・供応・慰安・贈答等の費用をいいます。これには、事業の円滑な遂行を目的とする飲食や贈答が含まれます。一方、これらが単に従業員の慰労や福利を目的とするものであれば、交際費には該当しません。
たとえば、得意先を招いたゴルフコンペの費用は交際費ですが、社員だけで実施する社内親睦ゴルフ大会の費用は福利厚生費となります。

■飲食費の取り扱い

 平成26年の税制改正以降、「一人当たり5,000円以下の飲食費」については、交際費等から除外できる特例が設けられています。ただし、これは取引先等と共に飲食した場合に限られ、社内だけの飲食(いわゆる社内懇親会等)は対象外です。
 また、会費制の懇親会で実費を徴収している場合、法人負担分のみを交際費等として扱います。領収書には、参加者名や人数を明記しておくことが必要となります。

■福利厚生費との区分

 福利厚生費は、従業員の慰安・厚生・福利を目的として支出される費用であり、税務上は原則として損金算入が認められます。ただし、支出の対象が特定の者に限られる場合や金額が過大な場合は、給与として課税される可能性があります。
例えば、全社員を対象とした忘年会費用は福利厚生費に該当しますが、一部の役員のみを対象とした懇親会は交際費または役員賞与と判断される場合があります。

■慶弔関係費用の取扱い

 取引先の慶弔に関する支出は交際費等とされますが、従業員の結婚祝いや弔慰金などは福利厚生費として認められます。ただし、役員に対する支給は役員給与とされる可能性があるため注意が必要です。
 また、社会通念上妥当な範囲を超える支出(例えば高額な花環や祝金など)は、一部が損金不算入とされることもあります。

■実務上の留意点

 交際費等の取扱いでトラブルが多いのは、「支出目的と対象者の整理不足」です。支出時に「誰のために」「どのような目的で」行ったかを明確にしておくことが肝要です。
帳簿上の摘要欄に、「○○商事○○氏との打合せ」など具体的に記載しておくことで、税務調査時の説明が容易になります。
また、クレジットカード明細や電子帳簿保存法対応のデータであっても、交際費か福利厚生費かを判定する情報を残しておくことが求められます。
 

■まとめ

 交際費・福利厚生費の線引きは一見単純なようで、実務上はグレーゾーンが多く存在します。取引先が関係する場合には交際費、社内限定で全従業員を対象とする場合は福利厚生費、特定の者だけが対象となる場合は給与課税のリスクがあり、この基本的な整理を常に意識することが重要です。
また、令和の電子帳簿保存制度やインボイス制度の下では、支出の根拠資料をデジタルで正確に保存することも欠かせません。日常の経理処理の中で、摘要の記載や証憑管理を徹底することで、後日の調査対応をスムーズにすることができます。

Ⅲ 小さな変革の連続で大きな成果を

-リ・イノベーションを意識した経営-
 現代社会において、大きな変革をもたらすものを作ることは、困難な時代です。生成AIの発明は大きなイノベーションでしょう。ですが、これは一部の天才が作り上げたもの。一般社会の企業では成し得にくいものでしょう。特に中小企業経営者は資金も時間もないでしょう。ではそんな経営者には、できないものなのでしょうか。そこで今回は、それならできるかもしれないと思わせるリ・イノベーションなるものを頭に入れておいていただきたいと思います。

■リ・イノベーションとは

 直訳すると「イノベーションをやり直す」となります。つまり新しい何かを生み出すのではなく、既に存在している知識・資源・商品・サービスなどを改めてとらえ直すことによって新しい価値を作り出す。
イノベーションをブラッシュアップさせていくことを指します。

■リ・イノベーションの概念

  1. 完全な破壊ではなく、既存資源の再構成(Re-configuration)
  2. ビジネスモデルの微細な刷新の連続性(Incremental renewal)
  3. 社会・技術・顧客の変化を前提とした適応(Adaptive Innovation)
 

■視点・文脈転換

1.今ある資源の棚卸と再定義
 技術、人材、ブランド、顧客基盤の価値の再評価を行い「過少利用資源」つまり顧客のスケールに対して十分こたえられていないものにスポットを当てます。
2.環境変化のモニタリング
 市場環境と突き合わせながら市場可能性のモニタリングをする。
3.価値提案の再設計
 既に存在している知識・資源・商品・サービスなどを見直しをして新たな市場に進出などを図る。
例えば任天堂の家庭用ゲーム機に家庭団欒やエクササイズという価値を加えてゲーム機市場にプラスアルファを作り出すなどや大塚製薬のポカリスエットの売り出しのためにインドネシアでラマダン(断食)時の脱水症状を予防するうたい文句で市場を拓いたなど。
4.プロトタイピング
 試作品として具現化して検証と改善を重ねることで製品やサービスの完成度を高める。
5.ビジネスモデル全体への展開

■リ・イノベーション経営の特徴

1.既存資源の価値最大化
 企業内に蓄積されたデータ、人材、ノウハウ、ブランドなどの資源を再評価し、新たな組み合わせを模索する。これにより低コストで小さなイノベーションを起こす。
2.柔軟な組織構造と学習文化
 発想の柔軟さと意見の通りやすさTry & Errorの許容度のある組織構造と常に学習していく文化がはぐくまれる。
3.顧客共創の推進
 従来のマーケティングに加えユーザーの利用状態などから得られるデータをリアルタイムで反映し、顧客とともに新たな価値を設計していく。
4.ビジネスモデルの周期的刷新
 きれいな水は流れ続けることによって維持される。よどんだところにはきれいな水はないがごとく、ビジネスも流れ続ける必要があります。同じ価値・同じ価格・同じ素材。伝統という名の下に行い続けて生き延びられるほど、現代社会は甘くありません。事業の価値提案・収益構造・パートナー関係を継続的に点検・再設計する必要があります。

■モデルケース

1.創業39年の金属加工工場 依頼加工が減少し売り上げ低迷
 熟練工の「カンと経験」を数値化するため加工プロセスをセンサーで記録し、手作業のノウハウをAIに組み込む「加工条件レコメンド」システムを自社開発し他工場で向けにも利用できるサブスクリプション型サービスとして展開することによって旧来の加工依存から脱却。売り上げ構造の多角化に成功。
完全に新規事業を作るのではなく、既存の熟練技術をデジタルで再価値化した。
2.地方で100年以上続く味噌メーカー。若年層の味噌離れで売り上げ減少
 既存の味噌製造設備を生かして「味噌×スイーツ」「味噌×発酵ドリンク」新商品を開発。
生産工程を変えずにフレーバーとブランドストーリーを刷新。
SNSで「味噌のある暮らし」を提案し、体験型ワークショップを開催。
効果として、若年層のファンを獲得し、地域外のECサイトからの売り上げが急増。
製造プロセスを壊さず、ブランドと体験の再定義によって価値の更新を図る。
3.地域の小規模印刷会社。紙媒体の需要低下で売上減少
 既存のデザインノウハウを使い、デジタル広告やSNS運用の支援サービスの展開。
印刷機は完全に手放さず、小ロット高付加価値印刷に特化。
顧客データと印刷デザインと統合した販促支援パッケージの運用開始
効果として新たな顧客層の獲得。印刷物を納品する会社から販促全般のパートナーへポジショニング転換。
 
 大きく転換するのではなく、既存の会社としての財産をどう活かすかは、働く人次第です。小さな転換が大きな潮流を作ることはよくあることです。これだけヒット商品などの寿命が短くなった今、大きなコストや社運かけてする事業はリスキィでしかありません。コストをかけずにいかに既存の会社(社長)の財産を活かすかはリ・イノベーションの意識があるかないかだと思います。生き残っている老舗といわれる企業も100年前と全く同じものではないはずです。時代に合わせ、その時々の社長が伝統を守りながら現在に合うようにリ・イノベーションしてきたからこそ伝統は引き継がれるものです。
 中小企業では限られた資源となりますがその中でもリ・イノベーションは可能です。既存資源の再価値化、小規模な継続改善、顧客価値の再定義。これらを組み合わせることによって中小企業は大企業とは異なるアプローチができるはずです。中小企業が自らの強みを再発見し、新たなビジネスを創出するための参考になればと思います。

今月のアプリケーション

「IFTTT」
 毎日決まった時間にメールを受け取ったり、スマートライトと連携して同じ時間に電気がつくようにしたりいろいろなタスクが自動化できます。無料でも十分ですが有料ではよりたくさんの自動化ができます。

不審なメール・ショートメッセージに<注意>

不審なメール・ショートメッセージに<注意>

年末・年始 休業のお知らせ:令和7年12月27日(土)~令和8年1月4日(日)(5日(月)より通常通り)

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