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TFGニュース 2025年4月号

中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)
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2025年4月号 No.404
経営のお役立ち情報

Ⅰ「年収の壁」から見落とされている事案

-所得税だけがクローズアップされている-
 国会で審議されていた「年収の壁」問題が、103万円から160万円への増額で一応決着がつきました。この修正案を含む税制関連法案が2025年3月4日に衆議院を通過したことから、この法案が正式に成立すれば、2025年分の所得税から適用されます。現行では、個人の年収に関係なく103万円までを一律非課税としているが、今回の改正では「年収200万以下の人は160万円までが非課税」と年収別の非課税枠が構築されることとなります。
 もともと「年収の壁」の議論には「社会保険料の壁」「配偶者手当の壁」も含まれていますが、企業の規模などによって違うなど様々な要因が絡みますのでここでは割愛させていただき所得税がどう変わるかと見落とされている事案に絞らせていただきます。

■実務上どれほど違いがあるのか

1.現状(便宜上、社会保険料は考慮していません)

年収

給与所得控除

基礎控除

所得

所得税

103万円

55万円

48万円

0円

0円

160万円

55万円

48万円

57万円

28,500円

500万円

55万円

48万円

397万円

366,500円






2.改正後(便宜上、社会保険料は考慮していません)

年収

給与所得控除

基礎控除

所得

所得税

103万円

65万円

95万円

0円

0円

160万円

65万円

95万円

0円

0円

500万円

65万円

68万円

367万円

306,500円

        ※給与所得控除の速算表が公表されていないため現状の速算表を採用
3.年収500万の夫と年収160万の奥様の夫婦の世帯に対する税金比較
現状  夫 納税366,500円 奥様 所得税28,500円 世帯納税395,000円
改正後 夫 納税306,500円 奥様 所得税   0円 世帯納税306,500円
差額 88,500円となります。(比較しやすいように単純化しています。)
 
 これならあまり差がないようですが、それなりにありがたいと思います。
ただ、給与明細を見ていただくとお分かりになりますがもう一つ税金が引かれているはずです。さてそちらは見直されたのでしょうか。

■住民税の100万円の壁(大阪市は98万円自治体によって異なります。一般的な自治体の総称です)

 給与明細を見るともう一つ住民税(税金)が引かれています。これは1月1日に住民登録がある自治体に昨年の所得に基づき納める仕組みになっています。自治体によって課税対象となる収入の額は若干異なるものの、一般的には年収が100万円を超えると個人住民税が課税されます。大阪市で参考に見てみますと、均等割り5,300円(市民税3,000円、府民税1,300円、森林環境税1,000円)と所得割額(市民税8%府民税2%)とになります。(実際はここから控除される場合もありますが今回は省略いたします。)今回の改正ではここは触れられていません。つまり今回の改正で給与所得控除が10万円上がったので年収が110万円までは住民税が非課税となりますが、年収160万円に抑えても下表のとおり住民税は均等割りと合わせて57,300円を支払う必要があり給与明細には住民税の徴収をされていくこととなります。
これは前年の収入から翌年納める仕組みのためこの110万円の壁は2026年度分の住民税からとなります。
 しかし、教育、福祉、消防、救急、ごみ処理などの生活に密着した行政サービスの財源であるため、必要税との考え方もあります。ただ、「110万円の壁」が存在することは知っておくべきところでしょう。

■大阪市でのシミュレーション

1.現状(便宜上、社会保険料は考慮していません) 

年収

給与所得控除

基礎控除

所得

均等割り

住民税

103万円

55万円

43万円

5万円

5,300円

5,000円

160万円

55万円

43万円

62万円

5,300円

62,000円

500万円

55万円

43万円

402万円

5,300円

402,000円


2.改正後(便宜上、社会保険料は考慮していません)

年収

給与所得控除

基礎控除

所得

均等割り

住民税

103万円

65万円

43万円

0万円

0円

0円

160万円

65万円

43万円

52万円

5,300円

52,000円

500万円

65万円

43万円

392万円

5,300円

392,000円


Ⅱ育児・介護休業法の改正のポイント

-2025年4月から段階的に施行-
 育児・介護休業法(正式名称:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)は、仕事と家庭の両立を支援するための法律です。以前は育児や介護のために会社を辞めざるを得ないケースが多く、労働者は仕事か家庭の二者択一を迫られていました。このような問題を解決する目的に、労働時間の短縮や給付金の支給などの支援策を設けている法律です。
 今回の改正では、より両立しやすい環境の整備強化が図られています。

■子の看護等休暇の見直し

  働く親がより柔軟に子供の看護に対応できるように対象範囲や取得事由、除外規定が見直されました。

 

施行前

施行後

対象となる子の範囲

小学校就学の始期に達するまで

小学校3年生終了まで

取得事由

病気・けが、予防接種・健康診断

追加。感染症に伴う学級閉鎖等、入園(入学)式・卒園式

除外規定の変更

週の所定労働日数が2日以下、継続雇用期間6か月未満の場合に除外

除外対象は州の所定労働日数が2日以下(継続雇用期間の条件は撤廃)

  このように、改正により休暇対象となる子供の範囲が広がり、多様な理由で休暇取得が可能となります。又除外規定の簡素化により、短期間の雇用条件にある労働者でも一定の条件下で休暇が利用できるようになりました。

■所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大

  残業免除の請求が3歳未満の子を養育する労働者に限定されていましたが、下記のように小学校就学前の子を養育する労働者にも対象が広がります。

 

施行前

施行後

残業免除の対象

3歳未満の子を養育する労働者

小学校就学前の子を養育する労働者

■介護休暇を取得できる労働者の要件緩和

 

施行前

施行後

除外対象

週の所定労働日数が2日以下

継続雇用期間が6か月未満

週の所定労働日数が2日以下

  雇用期間の撤廃がなされ、短期間雇用の労働者でも一定の勤務日数が確保されていれば介護休暇の取得が可能となります。

■柔軟な働き方を実現するための措置

 令和7年10月1日施行の改正
 事業主に義務として3歳から小学校終業前の子を養育する労働者に対して以下の5つの措置の中から2つ以上を選択して講ずることとなっています。
労働者事業主が提供する2つの措置の中から1つを選んで利用することができます。
1.始業時間等の変更
2.テレワーク等(10日以上/月)
3.保育施設の設置運営等
4.養育両立支援休暇の付与(10日以上/月)
5.短時間勤務制度
2と4は原則時間単位で取得可とする必要があります。

■企業における対応

 育児休業の取得状況の公表義務の拡大が予定されており、中小企業も対象となる可能性があります。中小企業といえども社内制度・社内規則を見直さなければならないでしょう。
法改正を見据え職場環境の改善と人材定着の強化を図ることが求められるでしょう。
1.社内規則の見直しと整備
 法改正に伴い、企業は社内規則を見直し、法改正に適合させる必要があります。
また、従業員や介護休業を申し出しやすい環境を整えるため、個別の周知や意向確認の仕組みを作っておくべきでしょう。
2.雇用環境整備(義務対象)
 事業主は介護休業や介護両立支援制度の申し出が円滑に行われるように、次の内少なくとも一つの措置を講じる義務があります。
(1)介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
(2)介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口の設置)
(3)自社労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用事例の収集・提供
(4)自社労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
3.個別の周知・意向確認(義務対象)
 介護に直面した労働者に対し、事業主は以下の事項を個別に周知し、意向確認を行う必要があります。
(1)介護休業・介護両立支援制度等の内容
(2)介護休業・介護両立支援制度等の申出先(例:人事部など)
(3)介護休業給付金に関する情報
4.個別の移行聴取・配慮(仕事と育児の両立に関して)(義務対象)
 事業主は、妊娠、出産等の申出があった時や、労働者の子が3歳になるまでの適切な時期に、以下の事項について個別に移行を聴取しなければなりません。
(1)勤務時間帯(始業及び終業の時刻)
(2)勤務地(就業場所)
(3)両立支援制度等の利用期間
(4)仕事と育児の両立に資する就業条件(業務量や労働条件の見直し)
 聴取した意向を踏まえ、事業主は自社の状況に応じた配慮を行う義務があります。

Ⅲ死亡保険金の受取に係る税金

―課税される税金の種類や計算―
 死亡保険金の受取は税金の対象となります。また、死亡保険金の受取は、契約者、被保険者、受取人が誰かによって課税される税金の種類が変わるので注意が必要です。ここでは、死亡保険金に係る税金の種類、その種類ごとの税金の計算方法についご説明します。

■死亡保険金の受取に係る税金の種類

 死亡保険金の受取に係る税金の種類は、相続税、所得税、贈与税のいずれかで、契約者、被保険 者、受取人の関係により以下のとおり変わります。
1.契約者=被保険者
 相続税の対象となります。亡くなった人が生前に自己を被保険者として生命保険に加入し、その
死亡保険金が遺族に支払われるようなケースです。
2.契約者=受取人
 所得税の対象となります。夫が妻を被保険者として生命保険に加入し、夫が受取人になっている
などのケースです。
3.契約者≠被保険者≠受取人
 贈与税の対象となります。夫が妻を被保険者として生命保険に加入し、子が受取人になっている
などのケースです。

■死亡保険金の受取に係る税金の計算

1.相続税の場合
  (1)相続税の非課税限度額
     死亡保険金の受取人が相続人の場合、死亡保険金が「500万円×法定相続人の数」の非課税限度額の範囲内であれば、相続税は課税されません。
     また、死亡保険金が「500万円×法定相続人の数」の非課税限度額を超えていても、他の相続財産との合計額が相続税の基礎控除額である「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」以下であれば、相続税は課税されません。
  (2)相続税の税率と控除額
     相続税の税率と控除額は次頁の表の通りです。  

課税対象額

税率

控除額

1,000万円以下

10%

1,000万円超から3,000万円以下

15%

50万円

3,000万円超から5,000万円以下

20%

200万円

5,000万円超から1億円以下

30%

700万円

1億円超から2億円以下

40%

1,700万円

2億円超から3億円以下

45%

2,700万円

3億円超から6億円以下

50%

4,200万円

6億円超

55%

7,200万円


2.所得税の場合
  (1)所得金額の計算
     死亡保険金が所得税の対象となる場合には、所得税の所得の種類のうち「一時所得」として、以下のとおり計算されます。
    一時所得の金額=受け取る死亡保険金-払い込んだ保険料-50万円
     さらに、一時所得の金額はその2分の1相当額が他の所得と合算されて、税額が計算されます。
  (2)所得税の税率と控除額
     所得税の税率と控除額は以下の通りです。

所得金額

税率

控除額

1,000円 から 1,949,000円まで

5%

0円

1,950,000円 から 3,299,000円まで

10%

97,500円

3,300,000円 から 6,949,000円まで

20%

427,500円

6,950,000円 から 8,999,000円まで

23%

636,000円

9,000,000円 から 17,999,000円まで

33%

1,536,000円

18,000,000円 から 39,999,000円まで

40%

2,796,000円

40,000,000円 以上

45%

4,796,000円

  
3.贈与税の場合
 死亡保険金から基礎控除額である110万円を控除した額が課税対象額となります。ただし、一定 の要件に該当し、「相続時精算課税」を選択する届出をした場合には、基礎控除額とは別に累計2,500万円を控除することができます。
 また、贈与税の税率は、課税対象額や、契約者と受取人の関係、相続時精算課税を選択の有無等より変わります。

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