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TFGニュース 2023年6月号

中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)
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2023年6月号 No.382
経営のお役立ち情報

Ⅰ なぜ、相続すると税金がかかるの?

---相続税を設けた背景---
 税金は何に対して課税されるかで、3つに分けることができます。個人や会社の所得にかかる「所得課税」と物品の消費やサービスの提供に対してかかる「消費課税」、そして、資産の取得や保有に対してかかる「資産課税」です。資産課税には、国に納める相続税・贈与税、地方に納める固定資産税・都市計画税などがあります。ここでは、資産課税のうち相続税について制度が設けられた背景をみていきます。

■課税対象は基礎控除額を超えた資産

 ほとんどの人が納税者となりうる所得税や消費税と大きく異なるのは、相続税や贈与税を納めるのは多くの遺産を相続したり、高額の贈与を受けたりした人に限定されるということです。
 どのくらいの財産を相続すると税金を納めることになるのか、目安としては、相続した土地や建物、現金などから借金や葬式費用などを控除した正味の評価額(相続税を計算するときの財産の価額)が、基礎控除額(法定相続人の数に600万円を掛けた金額に3,000万円を足した合計額)を超えていると、相続税を納める必要が出てきます。算式では以下のようになります。
     評価額(資産価額)≧ 基礎控除額(3,000万円+法定相続人の数×600万円)
 また、生命保険金や死亡退職金がある場合は、それぞれ「500万円×法定相続人の数=非課税限度額」を超えた額が評価額に加えられます。
 税率は所得税と同じ超過累進税率が採用されており10%から55%(基礎控除額を除いた評価額が6億円超)の間で8段階に設定されています。

■相続税が設けられた背景

 海外には相続税を廃止したり、そもそも存在しなかったりする国が少なくありません。例えば、高齢者が第二の人生を過ごす国として人気が高い、カナダ、オーストラリアは1970年代に廃止、1992年にはニュージーランドが続き、高福祉・高負担で知られるスウェーデンも2004年に相続税を廃止しています。アジアでもマレーシアやシンガポール、中国には相続税はありません。
 個人資産を把握しきれていないという理由で相続税を設けていない国もありますが、相続税をなくすことで、優秀な富裕層が移住してくることを意図的にねらっていると考えられる国もあります。
 それではなぜ、日本には相続税があるのかという疑問が生じます。もともと日本に相続税が導入されたのは、日露戦争の戦費調達のためでした。しかし、戦争には勝利したものの、ロシアから賠償金を得ることができなかったので財政状況のひっ迫が続き、戦後も終了せずに今日まで存続する税目となってしまいました。
 第二次大戦直後には最高税率が90%という時代もありました。GHQより出された「シャウプ勧告」を受け、財産を有する財閥などに財産が一極集中となるのを防ぐという財閥解体の一環として相続税が利用されたからです。

■相続税導入の根拠

 相続税の導入の経緯は上記のようなものでした。相続税を課すことを理論的に正当化する理由としては、大きく分けて2つの考え方があります。
 1つは、個人で蓄積してきた財産は、死亡のときに一部を社会に還元すべきであるという考え方です。そして、もう1つは相続を受ける側に着目した考え方で、相続という偶然の理由によって富が増加することを抑制しようという考え方です。
 それではなぜ、人が亡くなったら社会に還元しなければならないのか、偶然の理由で富が増加してはいけないのか。それは次のような理由が挙げられます。
 ・個人で財産を蓄積できたのは社会のおかげでもある
 ・勤労は美徳である
 ・競争条件を同じくして、誰にでも努力すれば報われる社会を実現する
 こういった考え方の下では、相続税を継続する方向に傾いていくものと思われます。税金の仕組みは、単に税収が欲しいから取るというものではなく、国としてどのような社会を理想とし、目指していくのかにかかわる問題でもあるということがわかります。
 「理想は結構だが、最高税率55%の相続税は高すぎる。子どもや孫の世代が苦労しないように財産を残しているのに」。国の目指すかたちとは別に、現実にはそのように考える人が少なからずいることも事実です。海外には相続税がかからない国があるため、富裕層のなかには、相続税対策の一環として海外に移住しようと考える人も出てくるというわけです。

Ⅱ 現 物 給 与

---源泉徴収の対象となるものとならないもの---
 国税庁による「令和3年分 民間給与実態調査統計」によると令和3年12月31日現在の給与所得者数は5,931万人となっています。これらの方々には毎月のお給料や役員報酬に対して源泉徴収がなされ、年末調整や確定申告によりその年の年間の所得と所得税が確定し税金を清算します。その際、対象となる収入金額は基本給や諸手当の他にもあるので、それを「通勤手当等」、「現物給与」,「特殊な給与等」の3つに分類し、課税の対象になるものとならないものをご説明させていただきます。

■ 通勤手当等

  1. 通勤手当等は以下に分類され各々以下の限度額を超えた場合、超過額が課税の対象となります。
    交通機関又は有料道路を利用している人の通勤手当は1ケ月当たりの合理的な運賃等の額で15万円。
  2. 自転車や自動車などの交通用具を使用している人の通勤手当は、片道の通勤距離が55㎞以上31,600円 45㎞以上55㎞未満は28,000円 35㎞以上45㎞未満は24,400円25㎞以上35㎞未満は18,700円 15㎞以上25㎞未満は12,900円、10㎞以上15㎞未満は 7,100円 2㎞以上10㎞未満は4,200円 ※2㎞未満の場合は支給額の全額が課税されます。
  3. 交通機関を利用している人の通勤用定期券は1ケ月当たりの合理的な運賃等の額で15万円。
  4. 交通機関又は有料道路を利用する他に交通用具も使用している人の通勤手当や通勤用定期乗車券は1ケ月当たりの合理的な運賃等の額と上記2での金額の合計で15万円。

■ 現物給与

  1. 食事の支給:使用者が支給する食事で支給を受ける人がその食事代の半額以上を負担すれば原則として課税されませんが、その負担額を控除した使用者の実質支給額が月額3,500円を超える場合その実質支給額が給与として課税されます。
    但し、通常の勤務時間外に宿日直又は残業をした人に対し、これらの勤務をすることにより支給する食事については課税されません。
  2. 制服等の支給:職務の遂行上制服を着用しなければならない人に対して支給又は貸与する制服その他身の回り品、事務服、作業服は課税されません。
  3. 社宅等の貸与:使用人等に対して社宅や寮を貸与している場合、一定の算式により求めた賃貸料以上を徴収していれば課税されませんが、下回っていればその差額が課税の対象となります。また、役員に対する社宅が豪華社宅に該当する場合は実勢価格で判定されます。
  4. レクリエーション費用の負担:社会通念上一般的に行われていると認められている内容の会食、旅行、演芸会、運動会等といった行事を使用者が負担する場合、不参加者に対して金銭を支給したり、役員だけを対象とする場合を除き課税されません。但し、旅行については4泊5日以内(海外旅行の場合は目的地における滞在日数)で全従業員の50%以上が参加している等の一定の条件を満たす必要があります。
  5. 永年勤続記念品等の支給:概ね10年以上勤続した人を対象としたものである等の一定の条件を満たす永年勤続者に対する記念の旅行・観劇への招待や記念品の支給については課税されません。
  6. 創業記念品等の支給:創業記念、工事完成記念等の記念品で社会通念上、記念品としてふさわしいものであって、その価格が税抜1万円以下であるなど一定の条件を満たすものは課税されません。但し、建築業者、造船業者等が請負工事又は造船の完成等の場合に対するものを除きます。
  7. 商品、製品等の値引き販売:使用者が取り扱う商品・製品を値引販売で取得する場合に通常他の者への販売価額の概ね70%以上であるなど一定の条件を満たす場合は課税されません。
  8. 金銭の無利息貸付等:使用者が金銭を無利息又は低利での貸付は、災害、疾病等に基因するもので
    ある場合や使用者による借入金の平均調達金利など合理的と認められる金利を徴収している場合や
    その経済的利益が年間5,000円以下の場合は課税されません。
  9. 福利厚生施設の利用:使用者が費用負担する福利厚生施設で、その負担額が著しく多額であったり、役員だけが利用できる場合を除き課税されません。

■ 特殊な給与等

  1. 旅費:勤務地を離れてその職務を遂行するために行う旅行や転任に伴う転居のために行う旅行で通常、必要と認められるものは課税されません。
  2. 宿日直料:宿日直を本来の職務とする人の宿日直料等一定のものを除き、1回の宿日直に対する支給額の内4,000円部分までは課税されません。
  3. 交際費等:原則課税ですが、使用者の業務の為に支給したことの事績が明らかであれば課税されません。
  4. 結婚祝金品等:雇用契約等にもとづき支給される結婚、出産等の金品は受ける人の地位等に照らして社会通念上相当と認められるものであれば課税されません。
  5. 葬祭料、香典、見舞金等:社会通念上相当と認められるものであれば課税されません。
  6. 労働基準法等の規定による各種補償金:療養の給付や休業補償等は課税されません。
  7. 学資金等:通常の給与に加算して受ける奨学金については課税されません。但し、役員に対する学資金や、従業員の配偶者や親族等に対する学資金は課税されます。

Ⅲ 相続土地国庫帰属制度

---使わない相続不動産を国が引き取る制度---
 土地を相続したものの、「遠くに住んでいて利用する予定がない」「周りに迷惑が掛からないようにきちんと管理するのは経済的な負担が大きい」。そのような理由で相続した土地を手放したいとき、その土地を国に引き渡すことができる「相続土地国庫帰属制度」が令和5年4月27日から始まりました。もちろん、売れればいいですが売れなければ売れない期間コストがかかってきます。その場合の一つの手段としてこの制度が生まれました。

■ 概 要

 相続や遺贈によって取得した土地を国庫に帰属させるために承認を申請できるようになります。
つまり、国に引き取ってもらうために申請をして承認されれば負担金を納付することによって手放すことができるのです。ただし、何でもかんでも引き取ってもらえるわけではありません。ではどういったものが該当するのか順次ご紹介いたします。

■ 申請ができる対象者

  1. 相続・遺贈によって取得した土地であること
    相続等以外の原因で自ら取得した土地や相続等で取得できない法人は対象外となります。 
  2. 共有名義でも申請できます
    相続等により、土地の共有持分を取得した共有者は、共有者全員で共同して申請を行うことによって申請ができます。また、相続等により共有持分の一部を取得した共有者も対象です。少しわかりにくいですが第三者からA・B二人が購入したとします。そのうちAが亡くなってAさんの持ち分をB・Cで相続した場合、Bさんは一部購入・一部相続で共有名義になります。この場合B・C共同で申請ができるという意味です。
  3. 施行前に相続した土地も対象です
    この制度開始前に相続等によって取得した土地についても、本制度の対象となります。
    例えば数十年前に相続した土地についても、対象となります。

■ 申請ができない土地の要件

  1. 建物がある土地
    土地の上に建物がないことが要件となりますので建物があると申請そのものができなくなります。簡易建物などでも却下されますので取り払ったうえでの申請となります。
  2. 担保権や使用収益権が設定されている土地
    第三者が権利を主張できるようなものは却下されます。
  3. 他人の利用が予定されている土地
    通路や墓地・水路等などが挙げられます。
  4. 土壌汚染がされている土地
  5. 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地

■ 承認を受けることができない土地の要件

  1. 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
  2. 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
    放置自動車や樹木などがあると承認が受けられません。
  3. 土地の管理・処分のために、除去しなければならない有体物質が地下にある土地
    埋蔵文化財やガラ・廃棄物があると承認されません。
  4. 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
  5. その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

■ 負担金

 国が管理することとなった土地に関して、元々の土地の所有者が土地の管理の負担を免れる程度に応じて、国に生じる管理費用の一部を負担することとなっています。

 相続登記が令和6年4月1日から義務化されます。義務化の法理の施行は時間がかかるものです。所有者不明土地をこれ以上増やさないためにこういった制度が設けられました。選択肢が一つ増えたという印象ですが、ブラッシュアップが必要な制度ではないかと感じています。こういった制度は国民自らが申請して獲得していくものです。まだまだ使いにくい制度ですが、徐々に整備されていくのではないでしょうか。これからの動向を見守りたいと思います。


 今月のブックマーク
「Pocket」
 Webページや記事を保存して後で読むことができます。ビジネス関連の記事や情報を保存して後で読むことができます。
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令和5年度小規模企業者等設備貸与制度

公益財団法人大阪産業局では、独立行政法人中小企業基盤整備機構法に基づく「設備貸与制度」を実施しています。
目  的
小規模企業者等の創業や経営の革新に必要な機械設備を早期に導入しにくい状況がある中、公的に補助しようとする制度です。
概  要
機械設備を財団が購入し、長期かつ低利の割賦販売(分割払い)またはリースで提供する公的な制度
対象企業
創業者・小規模企業者
従業員規模
・製造業・建設業・運送業    20名以下
・商業・サービス業        5名以下
メリット
  1. 公的資金のため、安心・安全です。
  2. 運転資金やその他の調達に余裕ができます。
  3. 同一年度内で、設備価格の合計金額が1億円の範囲内で何回も利用できます。
  4. 設備価格の10%の資金(保証金:リースの場合は不要)で、設備投資計画が立てられます。
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