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TFGニュース 2023年5月号

中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)
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2023年5月号 No.381

今月のコンテンツ

経営のお役立ち情報

Ⅰ 空き家に係る3,000万円の譲渡特例

--- 概要及び見直し事項 ---
令和5年の税制改正がされ、空き家に係る3,000万円控除の特例の見直しが行われております。その概要等について紹介いたします。

■概要

 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。これを被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の「特例」といいます。

■被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等とは

  1. 被相続人居住用家屋とは、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で、以下の3つの要件すべてに当てはまるもの(主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物に限ります)を言います。
  2. 被相続人居住用家屋の敷地等とは、相続の開始の直前(従前居住用家屋の敷地の場合は、被相続人の居住の用に供されなくなる直前)において被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地またはその土地の上に存する権利をいいます。

■上記の「特例」の適用を受けるための要件

  1. 売った人が、相続または遺贈により被相続人居住用家屋および被相続人家屋の敷地等を取得したこと
  2. 次の(1)又は(2)の売却をしたこと。
    (1)相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。
     ①相続のときから譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されたことがないこと
     ➁譲渡のときにおいて一定の耐震基準を満たすものであること
    (2)相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の「取り壊し等」をした「後」に被相続人居住用家屋の敷地等を売ること
     ①相続のときから取り壊しのときまで事業の用、貸付の用又は居住の用に供されていないことが明らかなこと
     ➁相続のときから譲渡のときまで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと
     ➂取り壊し等のときから譲渡のときまで建物又は構築物の敷地の用に供されていたことがないこと
  3. 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  4. 売却代金が1億円以下であること

■主な改正事項

  1. 適用期限を4年延長する。適用時期については令和6年1月1日以後に行う被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等の譲渡について適用することになります。
  2. 特例の適用を検討するに当たって、上記の「取り壊し」の時期を何時にするかが問題となります。令和6年1月1日以後に行う家屋等の譲渡から、その取り壊し期限が「譲渡のとき」から「翌年2月15日まで」とされました。結果、取引当事者にとって適用の可能性が広がるものと考えます。なお、譲り渡した後に譲受人が取り壊しをする場合には、その取り壊しが翌年2月15日までに取り壊されていることを確認する必要があることに留意が必要であります。
  3. 家屋については取り壊し又は新耐震基準に適合していることのいずれかの要件を満たしておく必要があることに留意が必要であります。
  4. 被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした相続人が3人以上である場合には、特別控除額は3,000万円ではなく2,000万円とすることとします。

■手続き

当該「特例」の適用を受けるためには、一定の書類を添えて確定申告をすることが必要です。提出書類は以下のとおりであります。
  1. 譲渡所得の内訳書
  2. 売った資産の登記事項証明書等
  3. 売った資産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受けた「被相続人居住用家屋等確認書」
  4. 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書写し
  5. 売買契約書の写しなどで売却代金が1億円以下であることを明らかにするもの


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Ⅱ NISA制度の抜本的拡充・恒久化

---資産所得倍増、貯蓄から投資への観点から---
 現政権が掲げる「資産所得倍増プラン」とは、家計の貯蓄を投資に回すことで経済を活性化させようとするものです。我が国の家計金融資産の半分以上はリターンの少ない現預金で保有されています。これは米国や英国のように中間層でも気軽に上場株式や投資信託に投資できる環境が整備されてこなかったことも要因です。結果、米国ではこの20年間で家計金融資産が3.4倍、英国では2.3倍となりましたが、我が国では1.4倍に留まっています。
 我が国においても中間層がリターンの大きい資産に投資しやすい環境を整備すれば、家計の金融資産所得を拡大できるでしょう。また、家計の資金が企業の成長投資の原資になれば、企業成長は促進され、企業価値が向上するでしょう。そして、企業価値が拡大すれば、家計の金融資産所得は更に拡大するという「成長と資産所得の好循環」の実現が期待できるでしょう。
 以上のことを背景に令和5年度税制改正においては貯蓄から投資への流れを加速し、中間層を中心とする層が幅広く資本市場に参加することを通じて成長の果実を享受できる環境を整備することが極めて重要という観点からNISA制度の抜本的拡充・恒久化を行うことにしました。

■ NISAとは

 NISA(Nippon Individual Savings Account)とは、平成26年1月から始まった少額投資非課税制度の愛称です。株式や投資信託などの金融商品に投資し、これらを売却して得た利益や受け取った配当金に対しては税金がかかりますが、NISAは一定の金額の範囲内で、購入したこれらの金融商品から得られる利益が非課税になる制度です。

■ 現在のNISA

 現在のNISAは、①一般NISA、②つみたてNISA、③ジュニアNISAがあります。③については、令和2年度の税制改正で新規の口座開設が令和5年までとされ、令和6年以降は新規購入ができないこととされました。①及び②については、以下のようになっています。

一般NISA
つみたてNISA
対象者
18歳以上
18歳以上
年間投資上限額
120万円
40万円
非課税保有期間
5年間
20年間
生涯非課税限度額
600万円
300万円
口座開設可能期間
平成26年~令和5年
平成30年~令和19年
投資対象商品
上場株式・公募等株式投資信託
(一定の)公募等株式投資信託
※ 「一般NISA」と「つみたてNISA」のいずれかを選択します。


■ NISA制度の抜本的拡充・恒久化

 「資産所得倍増」、「貯蓄から投資へ」の観点から、NISA制度について、非課税保有期間を無制限とするとともに、口座開設可能期間については制限を設けず、恒久的な措置とします。
 一定の投資信託を対象とする長期・積立・分散投資の枠(「つみたて投資枠」)については、現行のつみたてNISAの水準(年間投資上限額40万円)の3倍となる120万円まで拡充されることになります。
 上場株式への投資が可能な現行の一般NISAの役割を引き継ぐ「成長投資枠」を設け、年間投資上限額を240万円に拡充するとともに、「つみたて投資枠」との併用を可能とします。
非課税保有限度額を新たに設定した上で1,800万円とし、「成長投資枠」については、その内として1,200万円とします。
新しいNISA制度は、まとめると以下のようになります。

成長投資枠
つみたて投資枠
対象者
18歳以上
18歳以上
年間投資上限額
240万円
120万円
非課税保有期間
無  制  限
生涯非課税限度額
1,800万円(内、成長投資枠1,200万円)
口座開設可能期間
令和6年1月1日以降、恒久化
投資対象商品
上場株式・公募等株式投資信託
(一定の)公募等株式投資信託
新しいNISA制度により、我が国においても中間層が幅広く資本市場に参加するきっかけとなり、成長の果実を享受できるようになることを切に願う次第です。

Ⅲ スタートアップ支援策

---2023年度追加支援策---
「今後の、日本経済の成長を実現させるためには、未来の成長の種をまく。」新しいアイデアや技術が出てくることによって経済成長へのシナリオが出来上がってきます。そのためにはスタートアップに対するハードルを下げようとする施策が既にあります。すでにある支援策についてはかなり広範にわたってありますので今回は割愛させていただき、2023年度の追加支援策についてみていきましょう。

■オープンイノベーション促進税制の拡充

 スタートアップ企業とのオープンイノベーションに向け国内の事業会社または個人の投資家が、スタートアップ企業の新規発行株式を一定額以上取得する場合、その取得価額の25%を所得控除することができます。これは今までの制度です。
2023年4月1日以降にスタートアップ企業の成長に値するM&A(議決権の過半数の取得)を行った場合、その取得した発行株式についても税制の対象となりました。
1. 要件
   株式取得価額が5億円以上のM&A。
2. 所得控除上限
   上限は1件あたり50億円。
   また新規出資型と合わせると1社あたり年間125億円まで。
3. 成長要件
   M&A後、5年以内にスタートアップが成長要件を達成した場合は、所得控除を継続して受けられます。成長に応じて3類型に分けられます。

■フリーランスの取引適正化法制の整備

 フリーランス(従業員を雇わず1人で起業する者)で仕事をする人が、報酬の支払い遅延や一方的な仕事内容の変更といったトラブルに多く直面していることを踏まえ、フリーランスに対し業務委託を行う事業者において、書面又は電子メール等の交付義務や報酬減額などの取引上の禁止行為等を定めるフリーランス取引適正化法案を今国会に提出予定です。

■中小企業基盤整備機構のベンチャーキャピタルへの有限責任投資機能の強化

 国内ベンチャーキャピタルに対して有限責任投資を実施し、過去10年間で1700億円の投資実績があります。今後新たに、資金力やスタートアップの育成ノウハウを有する内外ベンチャーキャピタルへの出資などを行うことも念頭に、出資機能強化を図っています。

■スピンオフ税制の拡充

 大企業からの独立を促すための税制。企業が子会社(事業)を分離する際、企業や株主の税負担の繰り延べが一定条件で認められています。従来は、企業(元親会社)は子会社の株式を完全に手放すことが優遇の対象でしたが、2023年度は企業が20%未満の子会社株式を保有し続ける場合も優遇対象となります。従って、分離される子会社は、元親会社と20%未満の資本関係を維持できるため、独立後も元親会社のブランドやシステム、顧客などを使うことが容易になります。
 ただし、上場企業からのスピンオフでは、分離会社も即時に上場することが税制優遇の条件になりますので独立後も確実に利益を上げられるような社内ベンチャーに限られます。

■ストックオプション税制の拡充

 設立5年未満の未上場企業については、課税繰り延べ対象となる権利行使期間が2~15年に延長されました。従来は死の期間は2~10年だったため、5年延長されたこととなります。

■ベンチャーキャピタルへの知的財産専門家の派遣

 特許庁がベンチャーキャピタルに弁護士・弁理士などの知的財産に関する専門家を派遣し、スタートアップ企業への支援を行います。これにより、特許や商標などの登録や活用にスタートアップ企業では、処理しきれない業務をフォローして後押しができるようになります。

■官民ファンドによる支援

 産業革新投資機構(JIC)傘下のベンチャー向け2号ファンド(2000億円規模)による投資。
今まで1号ファンドがありましたが、さらに国内スタートアップ市場の拡大を目指して至上課題の解決に資する投資活動を活性化させます。

■国外転出時課税制度に関する納税猶予の手続きの簡素化

 スタートアップが海外進出をする際、立ち上げ準備のために、役員・従業員等が海外赴任するケースがあります。その場合、有価証券等を1億円以上所有する場合は、国外転出時課税制度の対象となります。納税猶予を適用する場合、非上場の担保提供は、株券による担保提供が必要であったが、スタートアップの海外進出を促進するため、株券不発行でも、質権設定による担保提供を可能にするとともに、持ち株会社の持ち分に担保提供も可能となります。

■エンジェル税制の拡充

 個人からスタートアップ企業への投資は、事業見通しが不透明でビジネスリスクが特に高い創業時・直後における資金調達を支える重要なリスクマネーの供給源となります。しかし現状は、日本でのエンジェル投資の金額は極めて低い水準で推移しています。リスクの大きな時期への投資のため、事業化前段階での投資には、今まで投資課税を繰延できたものから非課税へと変更しております。また、起業家による会社設立のための出資も非課税となり政府の本気度が伝わってきます。

 他にもありますが、大きな流れとしては大企業の不採算事業の撤退、新規事業への投資を促す内容となっています。またこの追加支援はほぼすべて1年のみの単年になっています。うまく活用する事例が出なければ、単年で終わってしまうような内容です。あの手この手と策は出てきています。政府の意欲は見られ活用できるかどうかは大企業次第といったところでしょうか。


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 今現在のトレンドがわかります。人は興味を持もつと検索することが多くなっています。
今何が検索されているかわかります。

令和5年度小規模企業者等設備貸与制度

公益財団法人大阪産業局では、独立行政法人中小企業基盤整備機構法に基づく「設備貸与制度」を実施しています。
目   的
小規模企業者等の創業や経営の革新に必要な機械設備を早期に導入しにくい状況がある中、公的に補助しようとする制度です。
概   要
機械設備を財団が購入し、長期かつ低利の割賦販売(分割払い)またはリースで提供する公的な制度
対 象 企 業
創業者・小規模企業者
従業員規模
・製造業・建設業・運送業     20名以下
・商業・サービス業         5名以下
メリット
1.公的資金のため、安心・安全です。
2.運転資金やその他の調達に余裕ができます。
3.同一年度内で、設備価格の合計金額が1億円の範囲内で何回も利用できます。
4.設備価格の10%の資金(保証金:リースの場合は不要)で、設備投資計画が立てられます。

TFGでは経営管理システムの一環として国際基準のISOにも従来より取り組んでおり、また経営計画策定や事業承継、相続対策等に関する支援等についてのコンサルティング業務、スモールM&Aなどご遠慮なくご連絡ご相談下さいませ!
TFGでは現在、時差出勤及びテレワークを限定的に実施しております。ご不便をおかけすることがあるかもしれませんがご理解賜わりますようよろしくお願い申し上げます。
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編集委員長 藤本 清
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