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TFGニュース 2023年4月号

中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)
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2023年4月号 No.380
経営のお役立ち情報

Ⅰ 役員報酬を自由に決められない理由

― 適正額をめぐる問題点 ―
会計上は経費として計上できても法人税務上はそのまま損金として計上できないものとして「役員報酬」があります。課税の公平の観点から役員報酬の適正額についてみていきます。

■経費性のない報酬とは?

報酬や退職金は、通常会社の毎期の利益額、対象となる役員や従業員の会社での地位や勤続年数、会社への貢献度などに応じて決まります。会社の規模が大きくなると、不平等な扱いにならないよう、報酬の支給基準等を設けて支給されることになりますが、これらの給与は会社にとっては人件費に当たるため、利益を算出する際は控除できます。
 法人税も会計と同様、当期純利益から計算をスタートさせますから、経費性のある人件費はそのまま控除できます。問題は、名目上は「報酬の支払い」となっているものの、経費性がないものをどう扱うかということです。
 例えば、出社の頻度が低い役員が社長と同じくらいの報酬を受け取っている場合の「役員報酬」が該当します。報酬を多く支払い会社の利益が縮小すれば、少なくした金額に法人税率を掛けた分だけ法人税も少なくなります。会社への貢献などの要素はあまり考慮せず、貢献度の低い役員にも報酬を出したとしても、経営者としてはそれほど損をした気分にはなりません。一度に多くの報酬を支払う退職金であれば、所得金額でマイナスとなった部分は9年間繰り越して使うことができるため、場合によっては、法人税を納めなくてよい状態を一定期間つくり出すこともできます。それが社業への功績に見合った適正額であれば、問題ありません。

■役員報酬を使った利益調整のリスク

経営者が納税額を懸念して、欠損金をつくるために大規模な設備投資をしたとします。設備投資において事業上の必要性や合理性を考えた結果として、会社にとって有意義な設備投資が行われるのであれば、法人税法上、問題はありません。
 役員報酬の支払いは、自分や仲間に恩恵をもたらすものですので、ある程度支払いの必要性や合理性が希薄になりがちです。加えて報酬支払額の決定は、会社ごとの個別の事情があって、そのような事情は外部からはなかなか認識しにくいものです。もちろん役員報酬として会社の利益を外に出し過ぎると、次に投資に回せる金額が少なくなってしまうので、その期の法人税のことだけを考えればよいわけではありませんが、経営上問題のない範囲であれば、法人税の節税対策として役員報酬を上げるという方向にかられがちです。
 役員の貢献について第三者が客観的に評価することは難しいものです。非上場の同族会社であれば、オーナー社長の裁量で役員の報酬を決めることで、利益調整がしやすくなります。このようなかたちで「所得」や「法人税」が決定するのは不公平なので、役員の報酬については法人税法上の損金算入に制限がかかっています。

■損金算入できる「役員報酬」とは?

定期的に支払われている一定金額の役員報酬(定期同額給与)や事前に金額を税務署に届け出ているボーナス(事前確定届出給与)などは、損金算入が認められています。
 また、役員報酬でも、使用人兼務役員という肩書で従業員としての報酬部分が損金算入できます。社長・専務・常務といった主要なポストの役員などについては、従業員としての報酬部分の損金算入を否定しています。さらに、肩書は役員でなくても例えば筆頭株主で実質的に経営を行っているような者については、役員とみなして報酬の規制をかけることにしています(みなし役員)。
 定期的に同額の給与を払えばいいということで、はじめから働きに見合わない過大な報酬を定期的に支払うということもあります。そこで、たとえ一定額を定期的に支給することであっても、職務内容からして過大な支給については過大部分につき損金算入を認めないという扱いにもなります。これは退職金についても同様です。

■役員報酬に「適正額」はあるのか?

役員報酬の適正額の判断は、会社の内部事情や将来のビジョンなどを考慮したうえで「適正額」を判断しなければなりません。
 他方で、利益調整に制限をかけるためにも手段が必要になります。経営者としては、過大な報酬額ではないかと指摘された場合には、会社の内部事情やその役員がいかに売上に貢献したかを示して、適正額の根拠をアピールする必要があります。多くの経営者の方は、自分で考える「適正額」の範囲内で役員報酬を決めることとなります。
 合理的な基準として、自身の会社と同業同規模の会社の報酬額のデータを参考に、報酬の平均額などから適正額を決めるといった方法が考えられますが、このような専門的なデータは一般の納税者は入手ができないものです。
 会社としては処分されたときは、適正額以上は損金に入れられなくても仕方がないこととして割り切るか、課税処分されないよう控えめな報酬額にするのか、いずれかの選択肢しかありません。通常は控えめな報酬額にする会社が多いと思いますが、仮に全ての会社が控えめに報酬額を決定すると、データとしても控えめな数字になっていきます。そうなると、全体として役員報酬の適正額が経済実態から離れて必要以上に低いものとなっていきます。
こうした問題から裁判では、「同業同規模法人の最高額以内に収まっていれば、それが適正額である」、「明らかに過大ではなく、平均の範囲内であればいい」と、ある程度寛大な解釈もなされています。
このように役員報酬の適正額とは不確定なものであり、かつ、利益調整に利用されやすいことから、経営者の租税回避的な行動パターンを分析されては、新たな規制が加わるといったことが繰り返されています。

Ⅱ 教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る 贈与税の非課税

- 適用期間が延長されています -
令和5年4月1日、こども家庭庁が設けられ、急速に進んでいる少子化問題について様々な視点から施策を講じて少子化に歯止めをかけようとしていますが、税制に目を向けてみるともうすでに教育や結婚・子育てについて父母・祖父母からの援助を受けやすくする制度がすでに施行されています。今回は、教育や結婚・子育てについて父母・祖父母からの援助があった場合に一定の要件のもとで贈与税が非課税になる制度についてご紹介したいと思います。
なお、これらの制度は国税庁のホームページなどでも紹介されていますが、適用期間が令和5年3月31日までとなっています。ですが、令和5年度の税制改正で適用期間が延長されていますので、ご安心ください。また、これらの制度は細かい規定があり複雑になっていますが、骨格部分のみをイメージしやすいようにかみ砕いてご説明していきます。さらに詳細な部分をお知りになりたい方はTFGまで、ご相談ください。

■ 贈与税非課税制度の概要

これらの制度の枠組みについては教育資金も結婚・子育て資金もほとんど変わりがありませんので概要についてはまとめてご説明します。
資金の提供を受けて教育や結婚・子育てに資金を使おうとする人(以下「受贈者」といいます。)、次に資金の提供者である受贈者の直系尊属にあたる方(父母や祖父母など。以下「贈与者」といいます。)、そして贈与者からの依頼に基づき提供された資金を信託財産として預かる金融機関の3者が必要です。つまり、贈与者から受贈者へ直接資金を提供してもこれらの制度を受けることはできません。
実際の制度は以下のような流れで進んでいきます。
  1. 贈与者は金融機関に対し教育目的または結婚・子育て目的と謳ったうえで資金を拠出し、金融機関に信託財産として預かってもらう。
  2. 受贈者は1の拠出資金について、拠出額・目的その他必要事項を記載した非課税申告書をその金融機関経由で受贈者の納税地の所轄税務署長に提出する。
  3. 受贈者は目的に合致した支出をした時には、その支出の内容を示すもの(領収書、請求書といったもの)を、信託財産を預かってくれている金融機関に提出する。
  4. 金融機関は3で提出されたものを確認し、内容に問題がなければそこに記された金額を信託財産から払い出すとともに預り額の修正をする。

■ 贈与税非課税制度の適用要件

  1. 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税
・金額については受贈者1名につき最大1,500万円(ただし、学校等以外の者に支払われる金銭等につ
いては最大500万円)。
・受贈者の要件としては30歳未満の者で前年の合計所得金額が1,000万円以下の者。
・適用期間は3年間延長され令和8年3月31日まで。
  1. 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税
・金額については受贈者1名につき最大1,000万円(ただし、結婚の際に支払われる金銭等については最大300万円)
・受贈者の要件としては18歳以上50歳未満の者で前年の合計所得金額が1,000万円以下の者。
・適用期間は2年間延長され令和7年3月31日まで。
 
3.教育資金とは? 結婚・子育て資金とは?
   代表的なものを挙げておきます。詳細は教育資金については文部科学省のホームページ、結婚・子育て資金については内閣府のホームページに挙がっています。
  ・教育資金 学校に支払う授業料・入学金・入学試験料・通学定期代ほか塾やスポーツ、芸術活動についての指導料ほか
  ・結婚・子育て資金  結婚式に要した費用
            結婚に伴う転居に要した費用
            不妊治療・分娩・産後ケアの費用、子供の医療費ほか
             

■ 終了時の扱い

金融機関との間にある資金管理契約は次のいずれか早く訪れる日をもって終了します。
  1. 受贈者の年齢が要件の上限(教育資金の場合は30歳、結婚・子育て資金の場合は50歳)に達した場合。この時、信託財産が残っている場合にはその残っている金額は終了時における受贈者への贈与とみなされ、贈与税の課税対象となります。
  2. 受贈者が死亡した場合。
  3. 信託財産が0になるなど、金融機関との当該契約が終了する場合。 
 
紙面の都合で充分な制度説明はできていないかもしれません。疑問点がありましたらご遠慮なくご相談ください。

Ⅲ 進化するAI

―クリエイティブワークへの影響―
最近話題のChat GPTを通じてAI(人工知能)という言葉をよく耳にするようになってきました。このAI(人工知能)はどのように現在の企業活動などに影響があるかご紹介いたします。

■概要

AIの定義は定まっていないため、専門家によってさまざまな概念があります。
一般的には、人間の脳が行っている認識、思考、学習といった能力・活動をコンピュータなどを使って模倣し再現するシステムです。
 ただし、完全に人間と同等の知的活動を行う人工システムが生まれているわけではありません。にもかかわらず注目を集めているのは、「ディープラーニング」や「機械学習」といったAIに関連した新技術が登場したことで、商用化への道が切り開かれたためです。

■種類

AIは使用目的や機能によって以下の4つの種類に分類できます。
  1. 特化型AI
個別の領域に特化して能力を発揮します。決まった役割の中で、限定された範囲の処理を行うシステムです。現在実用化されているAIはすべて、特化型AIに含まれます。
  1. 汎用型AI
異なる領域で多様な問題を解決するAIです。柔軟性が高く自分がどのような状況にあるのかを理解して、取るべき行動を考えることができます。特化型よりも、より人間に近いシステムだと言えるでしょう。この先駆けとして「Chat GPT」が挙げられます。
  1. 強いAI
カリフォルニア大学の教授ジョン・サールによれば、「人間と同様の精神能力を有し、人間と同じような動作をする」AIです。人間と同様の頭脳、精神、意識を持つと言われています。ドラえもんやターミネーターのイメージです。
  1. 弱いAI
自意識や心を持たないAIです。与えられた役割やプログラミングされた行動は自動で行えますが、プログラムにない行動や想定されていないトラブルなどは処理できません。人の知能や行動の一部を模倣して、特定の作業や役割だけをこなすAIです。

■クリエイティブワーク

前置きが長くなりましたが、では、クリエイティブの世界ではどうでしょう。近年の研究は日本だけでなく米国、中国、イギリスを筆頭にAI先進国がしのぎを削っているところです。
クリエイティブの分野で世に出ている中では、小説の執筆、作曲、絵画などでプロジェクトが動いています。ただし、過去のデータから新しいものを作るため、過去にデータがないものは作れないのです。皆様考えてみてください。HP作成を依頼するとき、こんなHP作ってくださいといってサンプルのHPを提示していませんか?これなら、AIのほうがより早く作れるのではないか?これからはクリエイターの仕事が無くなるのではないか?不安になる方もいらっしゃるでしょう。もちろん過去のデータをトレースするクリエイターはいなくなるかもしれません。しかしこれからも、「新しい価値」や「意図するところ」などは過去のデータからは表すことができません。AIはクリエイトするうえで主要なツールになるかもしれませんが、より未来の構築であったり、ストーリーであったり人の思いや感情に深く根差した創造性がこれからは求められるのではないでしょうか。
AIの進化によって経済構造は変化・進化していくことは避けられません。単純作業の分野は産業ロボットなどで自動化がどんどん進んでいます。淘汰されるのか共存を図るのか人間も進化するのか50年先、いえ30年先にはもう答えが出ているかもしれません。
 
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