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TFGニュース 2023年3月号

中小企業の健全性支援マガジン(毎月1日発行)
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2023年3月号 No.379

今月のコンテンツ

経営のお役立ち情報

I. 令和5年より民法が一部改正されます

所有する土地・建物の防衛は万全ですか。
不動産に関して民法が一部改正され、原則として、令和5年4月1日から施行されます。どういったものが施行されるかというと「共有関係規定の見直し」、「相隣関係の規定の見直し」、「土地建物に特化した財産管理制度の創設」、「遺産分割の新ルールの導入」、「相続土地の国庫帰属制度の創設」があります。ここでは、これらの制度の見直しや創設についてご説明させていただきます。

共有関係規定の見直し

相続があり、相続人が登記をせず、相続人が未登記の状態としている土地が多数生じています。その土地を共同で所有している場合に変更・管理に必要な同意を得ることが困難で土地の利用に支障をきたしています。これを相続に限定せず共有全体の問題として以下の改正が行われました。

  1. 共有物に変更を加えようとする場合、形状又は効用の著しい変更を伴わなければ共有持分の価格の過半数で決定することができるようになります。
  2. 共有物を使用する共有者がいても、共有持分の価格の過半数で管理に関する事項を決定することができるようになります。また、その使用する共有者は別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し自己の持ち分を超える使用の対価の償還義務を負います。
  3. 管理に関する事項について、賛否を明らかにしない共有者がいる場合、裁判所の決定があれば、その明らかにしていない人を除いた共有持分の内で価格の過半数により管理に関する事項を決定することができます。
  4. 必要な調査をしても所在等の不明な共有者がいる場合、裁判所の決定があれば、その不明者以外の全員の同意で共有物に変更を加えることができます。また、その不明者以外の共有持分の価格の過半数により、管理に関する事項を決定することができます。
  5. 共有持分の価格の過半数で管理者の選任や解任ができます。管理者は管理に関する行為をすることができるが、形状又は効用の著しい変更を伴う場合は共有者全員の同意が必要。
  6. 遺産共有状態にある共有物に共有に関する規定を適用する場合は、法定相続分による持分を基準とすることを明確化。

相隣関係の規定の見直し

隣地の竹木が境界線を越えてこちらの敷地に入ってきた場合、現行の民法では「超えてきた根をこちら側で切ることができるも、枝についてはその竹木の所有者に切除されるとし自ら切除することはできませんでした。」枝を切除してくださいと申し出ても切除してくれない場合は強制執行の手続をしなければならず、所有者が不明又は所在がわからない場合は請求すらできない状態でした。また、その竹木が共有の場合は切除に共有者全員の同意が必要でした。今回の改正で以下のいずれかに該当する場合に自ら枝を切除することができるようになりました。

  1. 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しない場合。
  2. 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
  3. 急迫の事情があるとき。

竹木が共有の場合、共有者の内1名でも承諾をもらえれば越境した共有者の枝を自ら切除できるようになりました。

土地建物に特化した財産管理制度の創設

所有者がわからない土地・建物や所有者がわかってもその所在を知ることができない土地建物に対して地方裁判所に申し立てることでその土地・建物の管理人を選任してもらうことができるようになりました。又、所有者による管理が不適当なことで他人の権利を法的利益が侵害されたり、侵害されるおそれがあったりする土地・建物も同様に管理人を選任してもらえるようになりました。
雑草などが茂り越境してくる場合、空き家への放火の危険・不審者や害虫が住みついたりすることへの対策となります。

所有者がわからない・所有者の所在がわからない場合にこの制度を適用するには以下の2つの要件を満たす必要があります。
  1. 調査を尽くしても所有者又はその所在を知ることができないこと。
  2. 管理状況等にかんがみ管理人の管理の必要があること。

遺産分割の新ルールの導入

相続があり遺産分割をしないでそのままにしているとその遺産は共有となり、次の相続でも遺産分割をしない。を繰り返すと共有者が増え遺産の管理は勿論処分も困難となります。そこで、被相続人の死亡から10年を経過して行う遺産分割は、原則として法定相続分、又は遺言により行うことになりました。

相続土地の国庫帰属制度が創設

相続や遺贈により土地を取得しても、自宅として住むことなく、賃貸などで運用しにくく、売却もしにくい土地は放置されがちです。今回、その土地を手放して国に帰属させることが可能となりました。法務局に申請するのですが、建物や工作物がある土地は認められない、担保権の設定がない等といった一定の要件があります。又、国庫帰属が承認されると10年分の土地管理費相当額を負担金として納付する必要があります。
 総務省 情報ミニコーナー
総務省のHPで働き方改革の一環でチャットツールのビジネス活用が掲載されています。
働き方改革の大テーマの中には、DXや残業の削減あるいは業務プロセスの見直しなど様々な切り口があります。しかし、現実には課題をなかなか解決できていないという声をよくお聞きいたします。課題は企業によってさまざまではありますが、意外と現在のITツールを活用すれば、解決する、あるいは解決まで至らなくとも改善するものが多く出てきております。ここでは、事例も紹介されイメージしやすくなっています。例えば、プロジェクトごとのグループを作ることによって意思決定を早くできたり、情報の一元化ができたり、また、報告・連絡・相談のツールとして活用したりと、事例も紹介されていますので働き方改革並びに業務効率のツールとして検討してはいかがでしょうか。

II. 令和5年4月1日施行の労働保険関係の改正点

適用が猶予されていた法律もございますのでご注意ください

中小企業の割増賃金率の引き上げ

2023年(令和5)年4月1日施行の労働基準法の改正により、中小企業においては1カ月60時間を超える法定時間外労働に対する割増率が、現行の25%以上から50%以上に引き上げられます(37条1項但し書き)。すでに法律が適用されていましたが、中小企業においては、当分の間、その適用が猶予されていました。今回この猶予が無くなり、会社の業種・規模・従業員数を問わず、同じ割増率が適用されることとなります。これにより中小企業での残業代の負担は増すこととなります。国を挙げての賃上げの潮流に適合することとなります。ただし、中小企業においては、たちまちコストアップして利益を減らす原因となりましょう。

法改正前後の割増率は次頁の通りです。

残業の区分
引き上げ前の割増率
(2023年3月31日まで)
引き上げ後の割増率
(2023年4月1日以降)
法定内残業
法定労働時間
(1日8時間・1週間40時間)の範囲内
割増不要(通常の賃金)
割増不要(通常の賃金)
法定時間外労働(1)
法定労働時間超・60時間以内
25%以上
25%以上
法定時間外労働(2)
法定労働時間超・60時間超
25%以上
50%以上
また使用者が、労使協定により上記50%以上の割増賃金を支払うべき労働者に対して代替休暇(通常の労働時間の賃金が支払われる休暇・年次有給休暇を除く)を与えることを定めた場合に当該労働者が代替休暇を取得したときは、1カ月60時間を超える法定時間外労働のうち当該取得した代替休暇に対応する時間の労働については割増率50%以上の賃金を支払うことを要しないとされています。

給与のデジタルマネー払いの解禁

労働基準法第24条1項において、賃金は、原則、通貨で、直接労働者に、その全額を支払われなければならないとされており、労働基準法規則第7条の2第1項において、使用者は、労働者の同意を得た場合
  1. 当該労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金または貯金への振込
  2. 当該労働者が指定する金融商品取引業者に対する当該労働者の預かり金への払込みにより賃金を支払うことも認められています。

これに対して2023年(令和5)年4月1日施行の法改正により、一定の要件を満たす場合には、給与を「デジタルマネー(電子マネー)」で支払う(正確には、労働者の資金移動業者の口座への振込)を可能とすることとされました。会社がデジタルマネーによって給与を支払うことができるのは、厚生労働大臣の指定を受けた「指定資金移動業者」(4月1日以降資金移動業者からの申請に基づき、厚生労働省で審査の上、資金移動業者が指定されます。)が対象となります。指定の際には、速やかに、指定された資金移動業者に関する情報(資金移動業者の名称、資金移動サービスの名称、資金保全の仕組みに関する情報、労働者からの同意取得時に記載が必要な情報など)の一覧がHP掲載される予定です。

雇用保険料率の改正

令和5年4月1日から令和6年3月31日までの雇用保険料率は以下の通りです。

労働者負担
事業主負担
雇用保険料率
一般の事業
6/1000
9.5/1000
15.5/1000
農林水産・清酒製造の事業
7/1000
10.5/1000
17.5/1000
建設の事業
7/1000
11.5/1000
18.5/1000

III. 生前贈与 大改正

暦年及び精算課税
令和5年度税制改正で、生前贈与の在り方が大きく変わり、暦年課税、精算課税について改正が行われる予定となっております。その概要についてご案内いたします。

暦年課税での相続加算の期間延長について

2024年1月1日の贈与から暦年課税で相続加算の期間が3年間から7年に延長されることとなります。

暦年課税では、毎年、基礎控除額110万円までは贈与税がかかりませんが、相続が発生した場合、贈与した金額が相続財産に加算され相続税が課税される「持ち戻し」というルールがあります。現状では相続発生から遡って3年前からでありますが、税制改正で7年前へと期間が延びることとなります(4年間延長)。なお、その延長4年間に受けた贈与については、4年間で総額100万円まで相続財産まで加算されないこととなっております。

具体的には、生前贈与する場合、親は子に贈与してから7年超生きなければ節税の効果がないこととなります。

相続時精算課税での基礎控除110万円の新設

相続時精算課税は贈与された財産の総額が2500万円まで贈与税がかからず、相続時に加算されるまで持ち越しますが、それ以外に、基礎控除110万円が新設されることとなります。上記の暦年課税と同様、精算課税でも年110万円まで「非課税」となります。

暦年課税と相違する点については、「持ち戻し」というルールを適用しなくてよい、つまり、相続時にも相続財産に加算しなくてよいということであります。

なお、相続財産の評価についての改正ですが、災害で一定以上の被害を受けた土地・建物の価額は相続時に「再計算」されることになっております。

暦年課税と精算課税の比較

相続開始7年前に生前贈与する場合、暦年と精算課税のどちらが有利かを考えてみたいと思います。例として7年間、毎年110万円贈与したケースを考えます。

  1. 暦年課税
    年間110万円を7年間贈与した場合、贈与税は非課税となります。なお、7年後に相続発生した場合、770万円は相続加算され、非課税措置はありません。
    ただし、延長された4年間については、総額100万円相当額は相続財産への加算はないことなります(非課税額は110万円)。
  2. 精算課税
    年間110万円生前贈与について770万円非課税となるのは上記と同様であります。上記(1)と異なるのは、7年後に相続が発生したとしても770万円相当額について相続加算を行う必要がないということであります。つまり、770万円は「非課税」のままとなります。

従いまして今回の改正では暦年課税は今まで3年経過してからの相続開始なら相続財産に加算しなくてもいいのですが、令和6年1月からは、7年経過しないと加算対象になります。どちらを選択すればいいとお声が上がるかと思いますが、これはそれぞれの条件によって判断が異なってきます。またほかにも贈与税の特例制度など生前贈与で活用出来る制度もあります。それら有効活用するご相談は随時受け付けていますので、ご相談ください。
 経済産業省 情報ミニコーナー
3月は「価格交渉促進月間」です。3・9月は価格交渉の多い月です。経済産業省もこの時期いくつかの取組をしています。発注企業への価格交渉及び価格転嫁への積極的な対応要請が経済産業省大臣名で出ます。又そのフォローアップ調査(受注側中小企業への状況調査)、関連サイトで適正取引講習会のeラーニングがあり、自宅にいながら無料で講習を受けることができます。又実践的に交渉のプロから学べるオンラインセミナーも無料で用意されています。
 今月のブックマーク
「ChatGPT(チャットGPT)」
今話題のAIチャットサービスです。質問をするといくつかの回答が得られたり、会話のようにチャットが進みます。日本でも禁止している企業が出るくらいです。精度は高いようですが、はたして?!
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セミナー情報

消費税インボイス制度 シリーズIII WEBセミナー

いよいよ開始時期が迫ってきました。一定期間配信期間を設けていますのでこのセミナーで最終チェックをしてみてください。皆様の不明点・不安点の解消に役立てれば幸いでございます。
テーマ
いよいよインボイスがスタート -事前準備は大丈夫ですか-
講師
TFG税理士法人 税理士 大谷 彰秀
WEB配信期間
令和5年5月1日(月)8:00~15日(月)24:00迄
費用
無料
視聴時間
60分
視聴方法
限定配信
視聴者専用URLを配信時までにレジュメと一緒にメールにてお送り致します。
申込方法
ウェビナー開催のお知らせの下部の申込書の欄にご記入いただきFAXにて弊社までご送信ください。
申込期限
4月21日(金)迄
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TFG税理士法人 問合せ担当 藤本
TEL:(06)6538-0872 FAX:(06)6538-0896
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